2006年03月29日

スペースシャトルの落日

書名:スペースシャトルの落日
著者:松浦晋也
出版:エクスナレッジ
内容:NASAの技術の粋を結集して作られたスペースシャトルではあるが、
  ごく客観的にその成果を見た場合宇宙船として巨大な失敗作であった
  といわざるを得ない。
  本書では、スペースシャトルの全貌を虚心に見直してその計画に潜む
  問題点を指摘し、「大半が再利用可能な機体」という新たな技術的冒
  険を重視するあまり、本筋である安全・安価な宇宙ロケット技術の成
  熟化という課題の達成がなされなかった点を指摘する。

  そして、その重大なコンセプトの欠陥を認めぬままシャトルにこだわ
  り続けたことが宇宙技術の停滞を招き、世界各国もその停滞に巻き込
  まれたと論じる。その上で、とにかく確実な技術をもとに着実に宇宙 
  開発の実績を積み上げることこそが肝要であり、一刻も早く方向転換
  すべきだと主張している。

感想:天かける翼というイメージを起こさせるスペースシャトルの姿に、
  宇宙への限りないあこがれをかきたてられた人たちは数多い。私もそ
  の一人である以上、この本の内容は大変耳の痛い、苦痛に満ちた内容
  である。だが、チャレンジャーの爆発事故・コロンビア号の大気圏突
  入事故という2つの悲惨な事故と、それから明らかとなったシャトル
  技術そのもののあやうさは、もはやかくしようもない。合衆国自身、
  ようやっとスペースシャトル運行の収束を決断しているところである
  以上、日本でも一刻も早く「今できる技術で、今から着実に実績を伸
  ばす」という原点に返って宇宙開発事業を立て直すべきだろう。

  ちなみに自他共に認める宇宙マニアであり、恐らくはシャトルに対す
  る思いいれも人一倍であろうSF作家の笹本裕一氏もあとがきを書い
  ており、宇宙開発の復権を願う思いがひしひしと伝わってくる。

  書評の順序からするとちょっと紹介が早めなのだが、おりしもディス
  カバリーが打ち上げられながら様々な問題が指摘されている中、タイ
  ムリーかと思い本書を紹介する(2006年7月31日当時)。

  なお私見だが、実際問題として今回報道されている耐熱パネルの
  損傷 は、コロンビア以外の無事成功したフライトでも何度か起き
  ていた可能性が高い。よって今回のディスカバリーがとりわけ危険
  性が高い、というわけではないと考える。もちろん、決定には慎重
  の上にも慎重を期さねばならないが。
(追記:もちろんご存知の通り、この時のフライトでディスカバリーは
  無事帰還することができた。これからの取り組みに期待したい。)
posted by 半端者 at 10:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

複雑な世界、単純な法則

書名:複雑な世界、単純な法則
著者:マーク・ブキャナン/阪本芳久 訳
出版:草思社
内容:宣伝文より〜つい最近、科学者たちは歴史上初めて、世界の様々
  な事象をネットワークの視点から論じる方法を手に入れた。この
  「ネットワーク科学」は非常に強力だ。単純ともいえるその根本を
  理解するだけで、自然科学はもとより、経済学、社会学などのあら
  ゆる分野の難問に、重要なヒントが得られる。それも、たちどころ
  に。いままさに科学に革命を起こしつつあるネットワーク科学の最
  前線を解説する。
感想:歴史物理学なるものの可能性について論じた前著「歴史の方程式
  〜科学は大事件を予知できるか」からさらに踏み込んで、ブキャナ
  ン氏は複雑ネットワーク理論の考え方が様々な事象の分析に用いら
  れることを丁寧に紹介している。

  もっとも古くから研究されているスモールネットワークのクラスタ
  ー問題の基本を改めて説明するところから始めて、具体的な例とし
  て蛍の点滅のシンクロ現象、インターネットのノード構造とウェブ
  ページのリンク構造、生態系の食物連鎖のつながり、生物を構成す
  るたんぱく質間の相互関係、果ては経済活動において貧富の差が広
  がる原理に至るまで、いたるところにスモールネットワークの性質
  による説明が可能な現象が見られるというのは、まさに圧巻である。

  極めて単純な法則であるがゆえに、いかなる複雑な現象世界におい
  てもその原理が底流において影響するのだということがよく分かる。

  ただ、当然ながらこの理論が万物を説明しているわけではない。あ
  くまで、複雑きわまる世界を特徴づけるルールのなかの単純なもの
  のひとつに過ぎないということは常に頭においておくべきであろう。

posted by 半端者 at 10:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月10日

大学院での勉強準備

いよいよ大学院でのカリキュラムが分かってきて、購入しないとまずそうな教科書もはっきりしてきた。以下はその一部。
posted by 半端者 at 02:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月04日

日露戦争史〜20世紀最初の大国間戦争

書名:日露戦争史〜20世紀最初の大国間戦争
著者:横手慎二
出版:中公新書
内容:日露戦争が世界全体の歴史においてどのような意味を持つ戦争であったのかに
  ついて、現在でもなかなか評価が確定していない。本書では、日本だけでなくロ
  シア近現代史の視点から、この戦争の背景・経過・影響を論じている。

  その結果、日露戦争が単に満州や朝鮮半島といった一地域を巡る利権争いという
  に留まらず、第一次世界大戦に先立ち史上初めて大国同士が組織として総力を挙
  げて戦った、近代的戦争と位置づけられることが、明らかになってきた。

感想:日露戦争といえば、やはり司馬遼太郎の「坂の上の雲」を忘れることはできな
  い。現在、NHKでは平成19年度以降の完成を目指して大河ドラマ化へ向けて
  準備を進めているそうだ。その完成が楽しみである。本書は新書一冊で当時の歴
  史的背景・経過・影響を実にコンパクトにまとめた歴史書になっており、ドラマ
  ができる前に読んでおく価値はある。

  とかくと、いかにもお手軽な本のように思われるかもしれないがそんなことはな
  い。基本的に登場人物の織り成す物語である「坂の上の雲」と異なり、国家全体
  の動き・国際社会の動向について背景から詳しく解説しており、熟読すると相当
  に時間のかかる難物であった。実は「坂の上の雲」の前に一度読んでおり、読了
  後再度目を通してみたが、本書のほうがより冷静に当時の両国を説明していると
  感じた。
posted by 半端者 at 02:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

巨翼の海原(上下)

書名:巨翼の海原(上下)〜連合艦隊加州戦記
著者:橋本純
出版:銀河出版
内容:ドイツの航空工学の奇才・ドクターリピッシュを日本に亡命させることに成功
  した、別な歴史を歩む日本。彼の天才的なアイデアは、グラウンドエフェクトを
  フルに活用した驚異的なペイロードを誇る超巨大飛行艇を完成させた。彼の亡命
  を画策した天才的戦略家である石原莞爾の野望は、ついに超巨大飛行艇部隊によ
  る、米国本土進攻を可能にしたのだ!

  歴史上初めて外国からの軍事侵攻を受けた、共和党のルーズベルトではなく民主
  党が政権を取っている米国の混乱と、崩壊。奇想天外、驚天動地、言語道断な妄
  想戦記。

感想:リピッシュ博士というのは実在の人物で、「巨大な機体で超低空を飛行するこ
  とで高度な安定性を持つ」航空機を構想したのも本当らしい。もしできたら面白
  かったとは思うが、いくらドイツから無制限に最高水準の頭脳流入を図ったから
  といって当時の日本のインフラ整備の遅れを埋めて、これほどの航空機を量産で
  きるはずもなし。

  妄想も妄想。デタラメもいいところの小説である。しかし、今の傲慢極まるアメ
  リカのことを思うと、天才的戦略家たる石原莞爾にいいように手玉にとられた
  かの国が、右往左往して世界から信用を失い、国際社会のトップから無様に脱落
  していく様は、妄想小説ながら大変痛快であった。
ついでに一言
posted by 半端者 at 02:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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