2006年10月29日

薬師寺涼子の怪奇事件簿シリーズ

書名:薬師寺涼子の怪奇事件簿シリーズ
著者:田中芳樹
出版:光文社、講談社、祥伝社
内容:薬師寺涼子、27歳。警視庁刑事部参事官・階級は警視。アジア最
  大の警備会社JACESの社長令嬢。東大法学部卒、国際刑事警察
  機構出向の経歴を持ち、語学堪能。容姿、頭脳、運動神経、そして
  財力。いずれをとっても完全無欠のスーパーレディ。

  ただし、その辞書に「良識・協調心」という文字はない。モットー
  は「勝てば官軍」「悪党に人権なし」「世界はアタシのために回っ
  ている」などなど・・・。天下無敵の美しき傍若無人、人呼んで
  「ドラよけお涼(ドラキュラもよけて通る)」(注1)の行くとこ
  ろ、常に人知を超えた怪奇な事件が巻き起こる。忠実なる部下、
  否シモベ?の泉田準一郎警部補を従えた彼女の常識外れの活躍が、
  今日も始まる!!

  3つの出版社にまたがり、現在7冊の新書が発行中。
  (実は垣野内成美氏によるコミック版もお勧め)

感想:田中芳樹氏を私が始めて知ったのは、今やSF長編シリーズの古
  典となっている「銀河英雄伝説」の作家としてだった。中国戦記小
  説を彷彿とさせる壮大な架空の歴史小説に魅せられ、思わず大学生
  協で衝動買いしてしまったのを思い出す。(ちなみに当時はまだ正
  伝3巻くらいまでしかでていなかったと思う。)

  そんな田中芳樹のもうひとつの側面を見せてくれるのが、このシリ
  ーズである。その物語構造は、まさに典型的なライトノベル。極端
  で非現実的なキャラクター設定、彼女を取り巻く一癖もふた癖もあ
  る面々と、毎回起こる奇想天外な怪奇事件、そして主人公の圧倒的
  な力による問答無用の事件解決は、ある意味ワンパターンと切り捨
  てられかねない。しかし、そこがまたいいのである。

  最近の小説における主人公の定番とも言うべきトラウマというもの
  が、彼女には全く、感じられない(注2)。雲ひとつない晴天に輝
  く真夏の太陽のような比類なき明るさ、自分の可能性に一切の疑問
  を持たない彼女の徹底したオプティミズムは、とても痛快である。

  もちろん、彼女は単にカッコいいだけではない。物語は一貫して部
  下の泉田クンの視点から語られているため明言こそされないが、お
  涼が彼を「かなり憎からず」思っていることが至るところに見て取
  れる。彼女をどんな局面でもしっかりサポートする有能ぶりに反し、
  その方面にはとんと朴念仁なシモベに時々いらだっているところが
  また、妙に少女的でかわいいのである。

  御用とお急ぎでないライトノベルファンの方なら、きっと喜んで読
  んでもらえると思う。

 (注1)彼女の通り名「ドラよけ」というのは、明らかに神坂一氏に
  よる人気ファンタジーシリーズ「スレイヤーズ」の主人公・天才魔
  道士リナ・インバースの通称「ドラまた」(ドラゴンもまたいで通
  る)から来ているものだと思われる。このことに触れた解説を他に
  見たことがないのはなぜ?

 (注2)無敵を誇る彼女にも、一人だけ苦手な相手がいる。番外編の
  短編に登場するその人、それは実の姉・絹子である。
(参考:「女王陛下のえんま帳〜薬師寺涼子の怪奇事件簿ハンドブック
(光文社)」

新書版リンク:

番外編など:

コミック版リンク:

posted by 半端者 at 22:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月02日

数学的にありえない(上/下)

書名:数学的にありえない(上/下)
著者:アダム・ファウアー/矢口誠・訳
出版:文芸春秋
内容:数学の天才でありながらいまや人生破滅寸前の男、デヴィット・
  ケイン。彼を悩ます神経失調症には大きな秘密が隠されていた。そ
  れは世界を根底から覆す、彼の「能力」が芽吹く前兆だったのであ
  る。その秘密をを狙う政府機関、「科学技術研究所」。彼らは強大
  な権力を駆使してケインを追い始めた。

  彼の「能力」とは何か?謎の研究を続ける科学者トヴァルスキーの
  目的は?慎重に張られた伏線が、ジェットコースターのような息も
  つかせぬアクション・サスペンスを引き起こす。その先にある者は
  なにか??前代未聞、まったく新しいノンストップ・サスペンスと
  して「第1回世界スリラー作家クラブ新人賞」を受賞した超高速
  サスペンス。
感想:もと統計学の講師にして数学の天才、デヴィット・ケイン。だが
  今は時折ひどい悪臭の感覚が襲うという神経失調症状と、ギャンブ
  ル依存症の末に抱えたマフィアからの1万ドルもの借金で、人生破
  滅の瀬戸際にあった。

  CIAの特殊工作員にして暗殺のエキスパート、ナヴァ・ヴァナー。
  2重スパイとして様々な情報を他国に売っていた彼女は、思わぬミス
  により某国工作員等から命を狙われるはめになる。

  謎の人体実験を続けるマッドな研究者・トヴァルスキーはついに被験
  者のジュリアを事故で殺してしまう。死の直前、彼女の残した言葉は
  ひとつ。「デヴィット・ケインを殺しなさい」追い詰められたトヴァ
  ルスキーはそれを啓示と考えてか、行動を開始する。・・・

  無関係に見える様々な事件が、数学・物理学・脳科学・その他の様々
  なガジェットを駆使して次々につながっていき、息もつかせぬノンス
  トップサスペンスに仕上げられているところは、あたかもダンブラウ
  ンのダヴィンチ・コードのようだ。余計な予備知識などなくても十分
  わくわくする、エンターテインメント小説だった。
以下ネタバレ感想:
posted by 半端者 at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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