2006年05月24日

銃・病原菌・鉄

書名:銃・病原菌・鉄(上/下)
著者:ジャレド・ダイアモンド/倉骨彰・訳
出版:草思社
内容:紹介文より〜ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南北アメリカ、オー
  ストラリア。それぞれの地で人類は極めて多様な社会を作り上げてき
  た。高度な工業化社会もあれば、伝統的な農耕牧畜生活を営む人々も
  いる。数千年に渡って狩猟採取生活を続ける人々もいる。なぜ人類社
  会はこれほど異なった発展の道筋をたどったのか。世界の地域間の格
  差を生み出したものの正体とは何か。

  この壮大な謎を、13,000年前からの人類史をたどりつつ、分子生物学
  や進化生物学、生物地理学、考古学、文化人類学など最新の研究成果
  をもとに解き明かしていく。・・・1998年度ピューリッツァー賞
  一般ノンフィクション部門、同年度「花の万博」記念「コスモス国際
  賞」を受賞した、人類文明発展の秘密に迫る傑作。

感想:1972年、著者ジャレド・ダイアモンドは専門である進化生物学のた
  めのフィールドワークをニューギニアで行っていた。そのとき現地の
  政治家「ヤリ」と親しく交流することがあり、彼はヤリより次の疑問
  を投げかけられた。「白人は、たくさんのものをニューギニアに持ち
  込んだが、ニューギニアには自分たちのもとといえるものがほとんど
  ない。なぜか?」

  ほとんどの白人文明圏に属する人々は、公式にはともかく無意識の底
  流に、その差に生物学的差異が影響しているという先入観を持ってい
  ることを、ジャレドは否定しない。その上で彼はこれを「おぞましい
  だけでなく科学的に間違っている」、と証拠を挙げてきっぱり否定す
  る。本書ではその上で、「ポリネシア諸島において異なる文化に分か
  れた部族間が衝突した例」「征服者ピサロによるインカ帝国の征服と
  大虐殺」「東西古代文明の発達と変遷の事実」など様々な事象につき、
  その根本原因をたどっていく。

  そして、究極的には文明の差異は「陸塊の形状、気候の違い、労働力
  の補完となりえる大型動物の分布、食料となる動植物の分布、病原菌
  の分布、資源として利用できる地下資源等の分布」などの環境要因が
  もたらしたものであると主張している。図を参照のこと。
文明多様化要因の因果関係2.JPG
  全体は4部構成に別れ、まず第一部で究極原因へ遡る道を概略でたど
  って枠組みを構成し、第二部でもっとも重要な究極要因である地理的
  ・生物的要因について詳しく考察する。

  第三部ではこれら要因から文明の差異へつながる因果の鎖を詳細にた
  どり、その過程で病原菌分布・文字の発生と様々な技術の伝播につい
  て考察する。最後に第四部で、世界の各大陸・島々の歴史をこれら考
  察でどのように説明できるか、考察している。

  著者は自らの考察について、あまりに広範囲の人類史について取り上
  げているがゆえの考察の不十分さもまた認めている。実際日本語の、
  特に文字に関する考察(漢字が「日本語を現すには問題がある文字
  である」というコメント)などいまひとつ勘違いではないかと思われ
  る描写もある。充分な証拠を集めるのは至難の業であるし、また社会
  現象である以上再検証は困難である。

  しかしこうした視点は今後の歴史観に大きな影響を与えていることは
  間違いないと思う。(その続編ともいうべき「文明崩壊」も秀逸!)

 「数量化革命」「失われた文明」そして本書「銃・病原菌・鉄」を紹介
  することで、くしくも私の文明観に関する基本的な考え方をまとめる
  ことができたのは、書評を書き始めて以来の痛快な体験である。
posted by 半端者 at 02:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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