2007年03月21日

神は沈黙せず

書名:神は沈黙せず(上/下)
著者:山本弘
出版:角川文庫
内容:幼い頃に理不尽な災害で両親を失って以来、家族で信仰
  していた神に不信感を抱くようになった、和久優歌。やが
  てフリーライターとして活動を始めた彼女はUFOカルト
  へ潜入取材中、空からボルトの雨が降るという超常現象に
  遭遇する。

  そしてその兄、和久良輔。コンピューター上での人工生命
  進化について研究を重ねていた彼は、「『神』の実在につ
  いて論理的に証明できた」と言い残し、失踪してしまう。
  おりしも世界中で頻発し始めた超常現象に世界が混迷の極
  に達する中、兄の行方を追う優歌もまた、「神」の正体に
  戦慄する。・・・・

  あらゆる超常現象の報告、人工知能、人工生命、進化論、
  複雑ネットワーク理論、社会論、歴史論、そしてもちろ
  ん宗教など幅広い領域に渡る膨大な情報を駆使して「論
  理的にありえる神」の解明に挑んだ、一大エンターテイ
  ンメント!
感想:著者・山本弘といえば、一般には(といっても、それな
  りに濃い分野ではあるけれど)「と」学会の活動で有名で
  ある。しかし実は、アマチュア時代まで含めると実に30
  年近くの経歴を持つ、SF界の大ベテラン作家でもある。
  本書はその作家生活の集大成ともいうべき壮大な小説とい
  える。

  ストーリーは基本的に、近未来、敏腕ルポライターとなっ
  た優歌による「神が顕れる」という異常な事件を描いたノ
  ンフィクションという形を取っている。そのため、ハード
  カバーの出た2003年時点で予測し得る社会背景の描写は
  (神に関する事件はもちろん別として)驚くほどリアルだ。

  いわゆる社会的いじめ、ネット住民の無責任な側面、それ
  らを裏から巧妙にあおって見せる天才的小説家・加古沢黎
  に潜在する歪んだエリート意識、いずれも現実を感じずに
  はいられない。しかしそうした社会描写は基本的に脇役で
  あって、本書の主役はあくまで「現実の社会を見たとき、
  合理的に存在しえる神」である。具体的説明はネタバレに
  なるので控えるが、その基本的枠組みは、山本弘が昔から
  色々な作品で表明してきた世界観の集大成になっている。

  例えば小説であれば「サイバーナイトシリーズ」とか
  「時の果てのフェブアリー」とか「ラプラスの魔シリー
  ズ」とか。もちろん、「と」学会の山本としての見解も
  満載。健全なスケプティクスの立場から社会を考え、か
  つ「人間の可能性を信じる」人にとって、格好のエンタ
  ーテインメントだと思う。

  ところで、加古沢の描写はいかにも「ダークサイド・
  オブ・山本弘」という気がする。ものすごく頭が切れて
  弁も立ち、世の中を妙にひねて見ている様子が、はっき
  り言ってイヤな奴なんだけれど子供っぽくてどこか憎め
  ない。それだけに最期は哀れ\(ToT)/
posted by 半端者 at 01:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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