2007年10月06日

脳の時計、ゲノムの時計

書名:脳の時計、ゲノムの時計〜最先端の脳研究が拓く科学の新地平
著者:ロバート・ポラック/中村桂子・訳
出版:早川書房
内容:ものを感じ、意識し、覚えるといった脳の活動のメカニズ
  ム。今日、そこでは様々なリズムで時を刻む多くの種類の
  「体内時計」が重要な役割を果たしていることが分かってき
  た。これらの起源は、生命が誕生した数十億年前にまで遡る
  ことができる。

  はるかな昔に死滅した種のために作られた時計に動かされて
  いる我々の脳は、何を考え、何を目指すのだろうか?世界的
  に著名な分子生物学者が、最新の研究成果を紹介しつつ、脳
  と意識、生と死を現代科学がどう捉えていくべきか、その進
  むべき道を模索する。

感想:本書は2000年に訳書が出版された比較的古い本で、タイト
  ルのみ知りながら今まで読みそびれていた。タイトルと副題
  を見ると、まず疑問に感じるのは脳科学とゲノムのかかわり
  である。前者は確かに現在急速に研究の進む分野であり、本
  書では脳の働きについて常に実時間より概ね0.5秒の遅れ
  があり、また脳の情報処理サイクルが概ね40分の1秒程度
  であるがゆえにそれ以上短い時間は直接認識できないことを
  紹介している。しかし、それが生物種としての時間サイクル
  をつかさどるゲノムとの関係をどう説明しているのだろうか?

  著者は、脳に関する感覚・意識・記憶・無意識に関する研究
  を通し、「留めようのない時間の流れと、それによりもたら
  される死への恐怖」こそが科学の姿を決める重要な要素であ
  るとする。その上で、ウイルス感染やガンとの際限の無い闘
  いにおいて「死を否定する」立場から医学に取り組むことの
  問題点を指摘し、より高い見地から生と死を密接不可分なプ
  ロセスとしてみた上で真に幸せを与える科学の方向性を示唆
  しようとしている。

  しかし、これは訳者も指摘しているとおり、少々へ理屈くさ
  い面がある。前半の「脳にかかる時間概念」についての脳科
  学的・哲学的考察と、後半の医学哲学はそれぞれ別個には納
  得できるのだが、その関連付けにはいまひとつついていけな
  いものを感じた。でも、大変示唆にとんだ興味深い本である
  ことは間違いない。
posted by 半端者 at 02:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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