2007年10月10日

あの戦争は何だったのか

書名:あの戦争は何だったのか〜大人のための歴史教科書
著者:保坂正康
出版:新潮新書
内容:戦後60年の間、太平洋戦争は様々に語られ、記されてきた。
  だが、本当にその全体像を明確に捉えたものがあったと言え
  るだろうか。旧日本軍の構造的問題から説き起こし、どうし
  て戦争を始めなければならなかったのか、引き起こした「真
  の黒幕」とは誰だったのか、その実態をいぶりだす。単純な
  善悪ニ元論を廃し、「あの戦争」を歴史の中に位置づける唯
  一無二の試み。

感想:太平洋戦争、あるいは大東亜戦争と呼ばれた戦争の原因と
  歴史上の意味を公平に評価するというのは、実は難しい。い
  わゆる東京裁判なる政治的イベントに基づいて喧伝された
  「侵略戦争観」が旧連合国側の極めて一方的な主張に過ぎな
  いことはもはや常識であるし、また一方で「アジアを開放す
  るために必死に戦った無垢な新興国大日本帝国」のような一
  部主張にもとうてい納得はしかねる。

  本書は、そういう偏見に満ちた主張を廃し、あの悲劇がどの
  ようにして起きたのか、どこに原因があったのかを日本の政
  策レベルから論じている。個人的には初耳であったいくつか
  の事実も紹介されており、大変興味深かった。その中でも印
  象的だったのは、「対米開戦の直接のきっかけとなったのは、
  従来の史観では開明的といわれていた海軍の、国防政策委員
  会の誘導によるところが大きい」という点だ。

  同委員会が開戦前「日本の石油備蓄は、このままでは2年も
  たない」というせっぱつまった報告をしているのは、実は充
  分な数字の根拠なしに主張したものだった。しかも本書によ
  れば、なんと当時ある民間交易会社(詳細は説明がない)が、
  海外で石油合弁会社を設立し、不足を解消しようとするプロ
  ジェクトがあったという。海軍の同委員会は圧力をかけてこ
  れをつぶしてしまったというのだ。

  なぜ海軍がそんなことをしたのか?本書では当時陸軍の活躍
  ばかりが目立っていたからとも、大艦巨砲主義の力に自信が
  あったからとも推定しているが、正直私にはよく分からなか
  った。

  このトピックがどれくらい事実に近いのかは不明である。だ
  が少なくとも、本書の主張として読める以下には同意できる。

  「統帥権を天皇にあり、とする大日本帝国憲法の規定がネッ
  クとなり、陸軍・海軍ともにその暴走を止める安全弁が働か
  なかった。」
  「日本は、国家戦略における戦争の位置づけを明確に意識し
  ていなかった。ゆえに本来なら極めて革新的な思想であった
  大東亜共栄圏構想が説得力を持ち得なかった。
  「戦争に突入するにしても、これをどのように収拾するかと
  いう現実的構想もなしに、ズルズルと問題解決を先送りに
  した。」

  これらの点については全く同感である。今なお、こうした国
  家戦略としての誤りを公的レベルできちんと統括し、国民的
  合意を得る努力もせず、ただ無定見に「日本は二度と戦争を
  起こさない」とのみ主張してきた日本政府は、未だ真の意味
  で戦後を統括していないとすら、言えるかもしれない。

  これではいかに大規模で多彩なODAの実績、積極的な平和
  外交などがあろうと、アジア各国からの充分な信用を得るこ
  とはできないし、日本の歴史に対する不当な偏見を払拭する
  ことなどできようはずがないと考える。
posted by 半端者 at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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