2007年10月21日

幻の終戦工作〜ピース・フィーラーズ1945夏

書名:幻の終戦工作〜ピース・フィーラーズ1945夏
著者:竹内修司
出版:文春新書
内容:太平洋戦争末期、当時日本外務省はソ連を通しての和平
  工作を主軸として動いていたが、米国を相手とする直接の
  和平工作ルートも数多く存在した。

  そのうち藤村・ダレスルートというのは割りと有名なのだ
  が、もうひとつ。国際決済銀行顧問ペル・ヤコブソンらに
  よる、水面下の和平工作が存在し、かなり緊密に日本の立
  場にも配慮した交渉が進められていたことは、あまり知ら
  れていない。

  本書は、スイスを舞台に行われた極秘工作の全貌を、新た
  に発掘されたヤコブソン自身の詳細な手記をもとに克明に
  再現する。

感想:1945年1月に入り、いよいよ太平洋戦争における日本の状
  況が絶望的なものとなった。当時日本外務省はソ連を通して
  の和平工作を主軸として動いていた。これがいかに愚かしい
  選択であったかはその後のソ連の不誠実極まる対応を見れば
  明らかだったが、それは別として米国を相手とする直接の
  和平工作ルートがあった。

  その仲でも最も実現の可能性が高かった、と筆者が主張する
  のが、国際決済銀行顧問ペル・ヤコブソンと、同銀行の北村
  理事、吉村為替部長によりスイスを舞台に行われた水面下の
  和平工作である。本書では、当事者であるヤコブソンが残し
  たほぼ1日単位での詳細な手記、米国に残る外交暗号通信の
  解読記録(日本の暗号はほぼ筒抜けだった。情報戦でここま
  でやられていたのでは、負けて当然である。)を交えて、こ
  の交渉の経緯を克明に再現している。

  これを見れば、「無条件降伏」という言葉の意味と「日本の
  国体護持」を巡ってかなり緊密に日本の立場にも配慮した交
  渉が進められていたことがよくわかる。だが周囲の様々な無
  理解・人間不信のため、ついにその交渉は実を結ばないまま
  本土各地は空襲に見舞われ、原爆は落とされ、ソ連の一方的
  参戦を招いた。

  歴史を学ぶにあたりIFは禁物だというが、この交渉を見る
  につけ「もしこの交渉をもっと日本政府が真面目に取り上げ
  ていたら!もし米国が今一歩踏み込んで交渉してくれていた
  ら!もしソ連を信用しすぎるという愚を犯さず、かの国の真
  意を見抜いていたら!」と思わずにはいられない。

  ところで、当時のソ連の不誠実な対応には、実は日露戦争で
  ロシアが味わった屈辱に対する怨念が影響していたのであろ
  うことは、想像に難くない。だがロシア側のあの敗戦は自業
  自得であり、日本に恨みを持つのはそもそも筋違いだ。

  やはり一日本人として、1945年のかの国の不誠実は、断じて
  許しがたい。
posted by 半端者 at 01:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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