2006年02月09日

新装版〜数学・まだこんなことがわからない

書名:新装版〜数学・まだこんなことがわからない〜難問から見た現代数学入門
著者:吉永良正
出版:ブルーバックス
内容:古代ギリシャ時代からの問題である「完全数」「素数」の探求問題から、最新
  の数学における未解決問題にいたるまで、その背景を「中学生にも分かるように」
  説く1990年10月に出た名著、その新装版。当時はその直前に伝えられた森重文氏
  のフィールズ賞受賞にちなんで「極小モデル」の話を無理して盛り込んだのが
  最新成果だったが、今回版ではこの後の大事件「フェルマーの大定理解決」への
  経緯、2000年にちなんで提示されたミレニアム問題などの話が加筆されている。
感想:昔初版を読んだような気もするが、新装版となってもその読みやすさ、面白
  さは変わりない。さすが一般向け科学解説新書の老舗、である。高校生くらいに
  初めて読ませるには依然としてお勧めの一冊だろう。ただ、扱うテーマの範囲は
  ぐっと狭い。最近読んだものの中で総合評価ベストを挙げるなら、やはり次に紹
  介する本「物理と数学の不思議な関係」を推したい。
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物理と数学の不思議な関係〜遠くて近い2つの科学

書名:物理と数学の不思議な関係〜遠くて近い2つの科学
著者:マルコム・E・ラインズ/青木薫・訳
出版:ハヤカワ・ノンフィクション文庫
内容:あくまで自然現象が研究対象の物理と中小世界に遊ぶ数学とは、似て非なる
  学問。しかし、斬新な物理理論構築の決め手になるのは往々にして、物理学の
  ためどころか現実に役立てることさえ念頭に無く、100年も前に作られていた
  数学の成果だったりする。なぜそうやって、いつもうまくいくのか?思いがけ
  ない結びつきをはらんだ豊富な実例を眺めるうちに数理的な考え方の極意が見
  えてくる稀有な一冊。解説・米沢富美子。
感想:文庫版の科学解説書なので読みやすいかと思えばとんでもない難物である。
  全12章に空間最密充填問題と結晶構造・ガラス構造の関連の話から始まって、
  一般相対性理論と非ユークリッド幾何学・弦の振動と微分方程式の関係から
  説き起こした量子力学の話・自然数から負数・有理数・実数・複素数さらには
  四元数という数の拡張と物理の関係、非線形方程式とカオス、コイン投げの問
  題から統計力学の話、トポロジーと高分子化学などなど、ものすごい広範囲の
  世界における数理的技術の活躍の有様が、相当程度の数式も交えて詳細に語ら
  れている。帯の記載どおり、まさに稀有な一冊といえる。

#ちなみに空間充填問題、いわゆるケプラー予想解決に関する2002年現在の状況も、
本書では訳者の補足として一言書かれている。

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温度から見た宇宙・物質・生命

書名:温度から見た宇宙・物質・生命〜ビッグバンから絶対零度の世界まで
著者:ジノ・セグレ/桜井邦朋・訳
出版:ブルーバックス
内容:数千年も前から使われてきた「長さ」や「時間」に対して、「温度」はつい
  300年ほど前にようやく測定できるようになった。膨張宇宙論が証明されたの
  も、量子力学が確立したのも、温度の測定によるところが大きい。この現代科
  学に欠かすことができない尺度である「温度」を道案内役にして、物理学のみ
  ならず、気象学、生物学にいたるまで様々なふしぎな現象に迫る。
感想:著者は、エミリオ・セグレ(1959年、反陽子の発見などでオーウェン・チェ
  ンバレンと共にノーベル物理学賞受賞)の甥にあたる、本人も高エネルギー物
  理学の世界的な権威。この種の一般向け科学書を書くのは初めてとのことであ
  るが、「温度」をキーワードに広範な領域にまたがる知的な物語を、見事に描
  き出していると思う。

   本筋とは関係ないが、米国では一般的な華氏という温度単位の根拠が、「水
  と氷と食塩の共存状態温度をゼロ度、人間の体温を100度」として定めたの
  が起源だとこの本で初めて知った。摂氏に比べて定義としての汎用性に極めて
  劣る・・・「さすが、アメリカンスタンダード」と感じるのは、多分偏見では
  ないと思うがどうか。
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クォーク〜素粒子物理学はどこまで進んできたか

書名:クォーク第2版〜素粒子物理学はどこまで進んできたか
著者:南部陽一郎
出版:ブルーバックス
内容:全ての物質は何か共通の基本的な材料からできているのではないか?この
  考え方から出発して、物質の究極的構造を求め、それを支配する基本法則を
  探る素粒子物理学。それがどのように発展し、どこまで来たかをトップクォ
  ークの発見を踏まえて見渡し、解説する。・・・とあるが、ブルーバックス
  としては相当に難物な本である。素粒子の相互作用を説明する数々の用語を
  フォローするだけでも労力を要する。
感想:帯にかかれた宣伝はこの第2版ならではの内容で、含蓄に富んでいる。
  表側には大きく、「ノーベル賞物理学者たちに無限のアイディアを供給し続
  けた先駆者・南部陽一郎」、裏には「2004年ノーベル物理学賞は、クォーク
  を結びつける『強い力』の謎を解明した米国の3氏に授与された。彼らの業
  績のもとになったのは、南部博士が1960年代にいち早く提唱した『量子色力
  学』のアイディアである。『正しかったが、恐らく早すぎた』−ノーベル賞
  委員会はそう言及して、米国で『物理学の予言者』と呼ばれる南部博士を
  高く評価した。」

  そして2005/5/12付けのニュースによれば、南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授
 (84)(大阪市立大名誉教授でもあるそうだ)は、2005年度のベンジャミン
 ・フランクリン・メダルを授与されたそうである。同賞は米国版のノーベル賞
  とも言われる賞であり、南部教授が数々の独創的なアイデアを提供してきた
  その功績が認められたとのこと。

http://www.asahi.com/culture/update/0512/011.html

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2006年02月06日

経済物理学(エコノフィジックス)の発見

書名:経済物理学(エコノフィジックス)の発見
著者:高安秀樹
出版:光文社新書
内容:経済物理学はカオスやフラクタルといった物理学の手法と概念を活用して、
  データに基づいて実証的に現実の経済現象に立ち向かう、まったく新しい科
  学の分野である。まだ誕生して10年にも満たないほどの若い研究分野だが、
  これまでの経済学の常識を覆す発見や斬新なアイディアが次から次へと報告
  されている。複雑で不安定なお金の世界にも、ものの世界と同じような自然
  法則が成立していることを、様々な例を挙げて紹介している。
感想:現実の世界では、需要と供給が均衡し安定する、といった理論上の定常状
  態はほとんど存在しない。必ず予測困難な不安定さをはらんでいることは実
  態を見れば明らかであったが、それを説明することは長い間困難だった。

  一方、物理学の世界においては多数の要素が局所的な相関関係をもとに独自
  にふるまうことで成り立つシステムを説明するためのカオス・フラクタルと
  いう手法が見出され発展してきた。その手法は、実は経済というシステムの
  分析にも有効であり、株価変動における投機の影響などについて詳しく分析
  できるようになってきた。本書ではこの最先端の成果を、分かりやすくかつ
  厳密性をなるべく失わずに説明している。著者はソニーコンピューターサイ
  エンス研究所シニアリサーチャー。
もう少し詳細:
  前半に物理学に複雑系の考え方を適用して得られた様々な成果が語られる。
  後半には、エコノフィジックスによる研究成果を踏まえた
  「通貨投機による不安定な為替変動を極力減らすためには世界の通貨総量内
  訳に基づき重みをつけたバスケット方式の国際通貨こそが有用であること」
  「デフレ対策としてのインフレ誘導というものは無意味である。高齢者層の
  ごく一部に集中して滞留している1400兆円もの金融資産を効率的に流動
  させるには、高額資産保持者からの相続税に重点をおく税制のほうが有用で
  ある。」
  といった、興味深い提言がなされている。

  ところで、IT技術の驚異的な進歩が、経済現象を構成する膨大な量の取引
  という要素をもれなく統計的に解析することを可能とした。これが経済物理
  学が始まる契機となった、と著者は語っている。これを読んで半端者は、
  10年ほど前に同僚相手に論じた主張を思い出した。そのとき語ったのは、
  「IT技術の驚異的な進歩が時価会計を必然のものとし、静態論的なアクチュ
  アリー科学を無力なものにするだろう。」
  ということだった。当時同僚は誰も理解しようとはしなかった。「時価会計
  は昔もあっただろう」というのが彼らのコメントだ。情報処理量と処理速度
  の増加が、考え方を質レベルで変化させたのだということを理解できなかっ
  たのだろう。

  あの時、もう少し突っ込んで議論していればに最先端の考えに近づいていた
  のに、と今思うと少々口惜しい気がする。
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歴史の方程式〜科学は大事件を予知できるか

書名:歴史の方程式〜科学は大事件を予知できるか
著者:マーク・ブキャナン/水谷 淳 訳
出版:早川書房
内容:たいていの研究者によれば、歴史上の重要な出来事は「起こるべくして起こ
  った」のだという。もし歴史に必然性があるなら、物理化学的な手法を用いて
  歴史の大変動を予測することができるはずだ。アシモフが「ファウンデーショ
  ンシリーズ」において架空の学問として生み出した「心理歴史学」を思わせる、
  そのような法則は存在するのだろうか?

  本書では、自然界に偏在する「べき乗則」が、その目的に迫る有力な手段であ
  ると論じている。事象の規模と頻度の関係がフラクタル構造を持つというこの
  不思議な性質は、地震の発生・山火事の延焼・景気の循環といった様々な事象
  に見出され、世界の構造に対する深い洞察を与えてくれる。

感想:べき乗則を見出すきっかけとなった有名な砂粒モデル(砂粒をテーブルにひ
  とつぶづつ落としていくときできる砂山が、どのような頻度でどの程度の山崩
  れを起こすか?実は頻度は規模の−2乗に比例するのであり、発生の有様はフ
  ラクタルな構造を持っている。特徴的な規模の山崩れは存在しない。)という
  のが、実はモデルとして条件が足りないというのを初めて知った。

  砂粒はある程度くっつきやすく、軽いことが必要であるし、また山崩れ時の粒
  の流れに比べて十分ゆっくりした頻度で砂粒を落とす必要がある。さもないと、
  山崩れは大規模なものが傾向的に起こりやすくなり、べき乗則に従わなくなる
  とのこと。臨界的自己組織化現象は確かに普遍的だが、全ての自己組織化現象
  が臨界的であるというわけではないらしい。そういえば、対流する流れがきれ
  いな6角形を作る現象は自己組織化の一例だが、明らかにフラクタルではない。

補足:残念ながら、ハリ・セルダンの言うような決定論的な意味での予測は本質的
  に不可能であるらしい。著者の人間社会に対する物理学的アプローチに関する
  展望は、自分では抑えているように書きながらも、傍から見て少し楽観的に過
  ぎるような気がするが、しかし現象の発生規模や頻度についての性質はあらゆ
  る事象について定式化が可能であり、相当程度有用な分析手法ではあるとは言
  えそうだ。
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応用物理の最前線〜エジソン効果から超高速現象まで

書名:応用物理の最前線〜エジソン効果から超高速現象まで
著者:早稲田大学理工学部応用物理学科
出版:ブルーバックス
内容:早稲田大学理工学部応用物理の若手からベテランに幅広く渡る研究者陣が、
  熱電子の効果・超高速現象の観測技術・光通信技術・量子コンピューターと
  暗号技術・ロボット研究など、興味深い数々の話題を互いに関連付けながら
  分かりやすく説いている。
感想:応用物理と銘打っているので数式に詳しく踏み込んだ話はないが、数式に
  からんで興味深い一説を見つけ感動した。正弦波の、ある波長kを中心とし
  て一定の範囲の波長を多数組み合わせることにより時間的ピークの狭い強い
  パルスを作ることができるが、このピークは、多数組み合わせる波長を取る
  範囲を広げるほど狭くなる。古典波に関するこの性質からフーリエ解析によ
  り真面目に計算すると、Δt×Δλ=一定数という関係を導出することができ
  る。・・・

  おお、これは不確定性原理そのものではないか!このような古典物理的素朴
  な議論からこの「古典論を覆した原理」が見出せるとは。・・・いやいや、
  待て。そもそも意外に思うのは間違いだ。科学上の画期的なパラダイムシフ
  トは、決して過去の成果をデタラメに否定して生まれるものではない。必ず
  過去の成果と新しい観測成果を並べて検証し、その中から生まれるのだから。
  古典論の議論から新しい考え方の萌芽が見出せるのは、ある意味必然。
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2006年02月05日

「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった

書名:「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった〜誤解と誤訳の近現代史
著者:多賀敏行
出版:新潮新書
内容:マッカーサーの「日本人は精神年齢12歳」なる言葉は、本当はどういう
  文脈の中で言われた言葉だったのか?山下将軍の「イエス・オア・ノー」は
  本当に傲慢な言葉だったのか?日米開戦前夜、日本からの大胆な譲歩案がハ
  ル長官に無視された理由は?誤解の原因の多くは先入観・無知に基づく翻訳
  のミスなどにあったことを、一次資料に遡って説明している。
感想:著者は1950年生まれ、一ツ橋大学法学部卒・ケンブリッジ大学修士課程修
  了の後1974年外務省入省、国連日本政府代表部勤務を経て現在バンクーバー
  総領事。英国での経験などを踏まえて、仕事の傍ら歴史資料にあたってまと
  めたものだとのこと。

  「精神年齢12歳」とは実は上院にて日本を弁護する意図で「日本は民主主義
  を受け入れてから日が浅い」ということを表現するために使っただけのこと
  であったこと、エコノミックアニマルという言葉が実は「日本人の経済につ
  いての才能」を褒めるニュアンスで使われた言葉であったこと、「イエス・
  オア・ノー」が不慣れな通訳の不手際に対して放った苛立ちのせりふに過ぎな
  かったこと、など、いずれもとても新鮮だ。言葉を「きちんと」理解するこ
  とがいかに大切か、再認識させられる一冊である。

  また、作者自身の英国留学時代の良い思い出と、カルチャーギャップを埋め
  るよき隣人に恵まれることがついになかった夏目漱石の英国留学の対比にも
  考えさせられることしきりである。
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2006年02月02日

囲碁の知・入門編

書名:囲碁の知・入門編
著者:平本弥星
出版:集英社新書
内容:碁は脳の健康スポーツ。では、一体どんなゲームなのか?なぜ碁盤は19路
  なのか?定石とは何か?記憶力がよくないと碁は強くなれないのか?−−
  定石は忘れよ!囲碁は仮想生命である、という異能の棋士が、様々な疑問や
  謎を解き明かしながら、技術や知識を超えた碁の考え方、囲碁という知につ
  いて説く。
感想:囲碁については本当に最低限の概念(囲めば勝ち)しか知らないので、本
  当に囲碁を知っている人にとっては異端の見方に違いない「囲碁は仮想生命
  である」という考え方は、むしろ私にとって大いにうなずかされた。囲碁の
  ルールの変遷や、盤面の構造に関する薀蓄などは大変興味深い。しかし、
  囲碁の基本的な用語(コウだの、シチョウだの・・・)に関する説明が極め
  て不親切で、さっぱり分からない。ストレスがたまることしきりである。

  ちなみに半端者みたいに数学が専門です、って顔をしていると(いや実際専
  門なんだが)将棋とか、囲碁など頭を使うゲームは得意であるかのように思
  われがちである。しかるに実は、上記ゲームはからっきしダメなのである。
  ゲームを構成している理屈そのものは面白いと思うのに、なんでだろうか?
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2006年01月30日

21世紀無差別級数学バトル


書名:21世紀無差別級数学バトル〜近畿大学数学コンテスト問題集
著者:近畿大学理工学部数学教室(編)
出版:ピアソン・エデュケーション
内容:近畿大学で「老若男女問わず、数学が好きな人集まれ!」という精神の
  もと1999年から実施している「近畿大学数学コンテスト」につき、2002年
  11月に実施した第5回までの問題から選りすぐった面白い問題を紹介している。
感想:本当にやさしい問題から一見やさしいながらよく見ると色々考えさせら
  れる問題、また正真正銘の難問まで幅広く登場しており、数学科卒
  (一応修士)になって長い身には、ちょうど良いトレーニングになってい
  る。(本書に限っては、いくら読んでも読破したという実感はわかない。
  何度も解いて楽しめる感じだ。)この中で、心に残った問題をひとつ紹介
  しておく。

それは、数学本来の表現で書くとこうなる。
「自然数1からnまでを要素とする集合から自分自身への全単射は全部でn!個あるが、そのうち不動点がないものの個数を求めよ。」

 この問題は、確か高校のころ3項間漸化式まで作って「ちっともきれいな式にならない!」
と放り出したものであった。今回も恥ずかしながらすぐには気づかなかったのだが、今回
まったくひょんなことから不意に道筋が見えて、解けてしまった。その経緯が面白い。

 漸化式は分かっているので、実際数値を計算するのは今なら表計算ソフトで可能だ。そこで
算式を眺めるのにあきた時、実際に計算してみた。当然すぐ大きくなるので、n!で割ってみた。
・・・と、その数値はものすごい速度で一定の数値に収束している。こんな単純な式で、これだけ急速に収束する級数といえばeがらみしかない・・・と思ってその収束しているらしき数値の逆数を取ったら=2.718・・・まさしくeだ。ならば、きっと1/eの級数展開と関係しているに違いない!

というわけで、その級数展開を途中で打ち切ったものを見たら、まさにそれが解答だった。そこからたどって、もとの漸化式を整理するやりかたも直ちに分かり、これでやっと高校時代からの懸案が解けたというわけである。

今にして思えば、元の漸化式から直接解けて当然というくらい、自然な解放だった。それなのにたどりつくのにこうも時間がかかったのは、本当に不思議である。解法のひらめきというものは、えてしてこういうものなのかもしれない。

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続・わが闘争〜生存圏と領土問題

書名:続・我が闘争〜生存圏と領土問題
著者:アドルフ・ヒットラー/平野一郎訳
出版:角川文庫
内容:いわずと知れた20世紀最大の独裁者・アドルフ・ヒットラーが、あの有名
  な「我が闘争」に続いて書き溜めた、未編集の草稿をまとめたもの。アメリカ
  国立公文書館に納められていたものに、豊富な訳注をつけた完訳版。第一級の
  一次資料というものであろう。
感想:ヒットラーの狂信的なドイツ民族至上主義や手段を選ばぬ現代のテロリスト
  と、アメリカの独善的なアングロサクソン流儀至上主義は、どこか相通じるも
  のがある。独裁者やテロリストの狂信と、己の基準を唯一の正義と信じ切り、
  それを押し通すため暴力に訴えることにいかほどの咎めも感じない大国のおご
  り。その両者にいかほどの違いがあろうか。

  本書は、第一次
  大戦後のヨーロッパ事情に明るくない日本人一般にとってとても読みにくい。
  まして、「あの」ヒットラーの本ということであえて読もうとする気はなかな
  か起きない。だが、言葉の端々から感じられるおぞましい怨念は、我々もとも
  すれば陥りがちな人間心理の暗部であり、現代の我々も一度は直視しておく必
  要がある。知らず知らずに彼と同様な狂気に蝕まれたりはしていないだろうか?
  そう振り返りながら読む価値はあると、愚考する次第である。
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量子のからみあう宇宙

書名:量子のからみあう宇宙
著者:アミール・D・アクゼル
出版:早川書房
内容:量子力学の奇妙な性質、その中核をなす「量子のからみあい(エンタングル
  メント)」とは何か。それは、ひとつの粒子が、まるごと一つの宇宙を隔てた
  別の粒子に瞬時に影響を及ぼすという「ありえない」現象である。ジョン・ベ
  ルは、量子力学が正しい理論であることと、このからみあい(非局所性ともい
  う)が生じていることが、実は同値であるということを純数学的な定理として
  証明した。このため「からみあい」現象の成否が世界中で実験検証され、つい
  にはその存在を支持する強力な証拠が次々に発見されるに至った。
感想:本書は、量子力学を推し進めた数多くの物理学者たちの、ダイナミックなド
  ラマである。

  彼らが実際に書いた論文の図面を豊富に引用しながら、「からみあい」という
  現実世界の枠では理解不能な現象のありさまについて様々な角度から、繰り返
  し説明している。量子力学を勉強すれば必ず登場する著名人、ジョン・ベルや
  アラン・アスペの写真が見られるのも珍しい。
補足:さて、「エンタングルメント」とは実にSFもの、ファンタジーものの心を
  くすぐる素材である。光の速度を超えた宇宙旅行はできないというアインシュ
  タインの相対性理論は、宇宙をくまなく駆け巡りたい我々SFものにとってし
  ばしば「やっかいな敵(笑)」であったが、それを打ち破るための武器になり
  そうなのがこの現象だからである。

  もちろん、いわゆる「相ま」論者(自らの無知・不勉強を棚に上げ、量子力学
  の生半可な知識などを振りかざして「相対性理論は間違っている!」とお題目
  を唱える方々。)の真似をしたのではお里が知れてしまうが、フィクションと
  承知の上でうまく架空の議論を組み立てるには、大変面白い素材だ。

またちなみに、著者アクゼルの本で他に有名な本で、フェルマーの最終定理解決を巡る本がある。てっきりそちらも読了済みのつもりでいたが、実は同系統の別な本(サイモン・ジン著「フェルマーの最終定理」)と勘違いしていたことについさっき気づいた。
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2006年01月27日

渡邉恒雄・メディアと権力

書名:渡邉恒雄・メディアと権力
著者:魚住昭
出版:講談社
内容:総理を動かし、世論を操る「一千万部」の独裁者〜力ある者は篭絡し、敵は
  必ず叩き潰す。東大の共産党時代から読売新聞社長にのぼりつめるまで、稀代
  のマキャベリスト・渡邉恒雄がいかにして権力を奪取してきたのか。児玉誉士
  夫、中曽根康弘との蜜月、社名を帯びた政官界工作、日韓条約交渉での暗躍と
  いった戦後の裏面史の全貌を、徹底取材で明かす。
感想:誰もが知る読売のドン、渡邉恒雄。世の中でこんなに恐れられ、嫌われてい
  る人間はそういないが、反面それに見合ったカリスマ性を持った人物であった
  ことは確かである。これを読むと、若いころのエネルギッシュな渡邉にはそれ
  なりに共感できる面もあるが、年を経るに従いどんどんそのあさましい権力欲
  をむき出しにしてくるところにはうんざりさせられる。人間関係のどろどろと
  した汚さに自分もどっぷりつかって、人を利用するだけ利用し、意に染まぬも
  のはどんな汚い手をつかってでも叩き潰す。

  その所業にわずかの痛みも感じるどころかむしろ誇りに思っているのがよくわ
  かる。やはり、到底好感をもてるようにはなれそうにない、「嫌なやつ」だ。
  そして多くの人には周知のとおり、2004年末のプロ野球選手を軽視する態
  度をきっかけにした反発から、2005年現在ナベツネは事実上表舞台から姿
  を消してしまったようである。まさに因果応報というべきなのかも知れない。

  2006年現在、またちょくちょく顔を出しているようである。前より少しは
  丸くなったようにも見えなくも無いような・・・いやいや、気のせいに違いない。

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ファインマン物理学を読む(力学と熱力学を中心として)

書名:ファインマン物理学を読む(力学と熱力学を中心として)
著者:竹内薫
出版:講談社サイエンティフィク
内容:朝日カルチャーセンターで行われた教養講座をもとにまとめられた、世界的
  に定評のある大学学部生向け物理学教科書の名著、「ファインマン物理学」
  案内本の3作目。
感想:熱力学の記載については、ファインマンにしてはめずらしく切れ味の悪い書
  き方が目立つ、との竹内氏の指摘には、うなずかされた。基本的にファインマ
  ンは、物理学の本筋は量子力学と相対性理論と、それを支える数学理論である
  としているようで、単純に古典的な熱力学の説明をする場合にも「ここではこ
  う説明しているけど、本当は量子力学の見地からこう説明するのが正しい。」
  という論調で説明している。

  それだけに、純粋な古典論の世界で閉じればそれなりにすっきりした説明が
  できるものを、妙に歯切れの悪い解説になってしまっているらしい。

大学学部生当時、生協の本屋に並んでいた「ファインマン物理」は一種の憧れであった。こうして一種のスターターガイドを一読したわけだが、それでもその深い内容にどれだけ近付いたのやら、心もとない。やっぱり高嶺の花としかいいようがない。

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ファインマン物理学を読む(電磁気学を中心として)

書名:ファインマン物理学を読む(電磁気学を中心として)
著者:竹内薫
出版:講談社サイエンティフィク
内容:朝日カルチャーセンターで行われた教養講座をもとにまとめられた、世界的
  に定評のある大学学部生向け物理学教科書の名著、「ファインマン物理学」
  案内本の2作目。前作では量子力学と相対性理論の項にスポットを当てていた
  が、今回は電磁気学。古典的物理学の世界ではあるが、内容は最初からマック
  スウェルの方程式から入って「基本はあくまで場の理論」であるという点を強
  調しつつ、相対性理論との関連を軸として首尾一貫とした講義を展開している。
感想:昔に確かSFマガジンだったか、電磁気学についてのパラドックスをトピッ
  ク的に解説した記事を読んだ覚えがある。その内容は

 「同じ向きに電流が流れている2本の平行な電線は磁場により引き合う。しかし
 電子の流れと同じ速度で動いている観測者にとっては、静電場を生じた2つの
 棒状電荷が並んでいるとも見えるので反発するともいえる。この矛盾をどう説明
 する?
 →一方の電線を走る電子に観測系をおくと、反対側の電線においてプラス電荷の
 密度がローレンツ収縮を起こして高くなり、全体としてプラスの電荷を持つこと
 になるから結局引き付けあうことになり、矛盾はない」

 というものだった。これは電磁気学の成果を出発点とすれば光速度不変の原理が
 必然であることを主張する、極めて優れた思考実験である。この説明が、ファイ
 ンマン物理学のものだと今回初めて知った。

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ファインマン物理学を読む(量子力学と相対性理論を中心として)

書名:ファインマン物理学を読む(量子力学と相対性理論を中心として)
著者:竹内薫
出版:講談社サイエンティフィク
内容:朝日カルチャーセンターで行われた教養講座をもとにまとめられた、世界的
  に定評のある大学学部生向け物理学教科書の名著、「ファインマン物理学」の
  案内本。難解な物理学の法則を驚くほど簡潔に、分かりやすく、その本質を語
  っていることで定評のある教科書だが、それでも一般教養本として取り組むに
  は分厚すぎるし、数学の部分とてなかなかに手ごわい(専門の物理学者を目指
  す学生に向けて書いているんだから当然ではあるが!)。

  そこで本書では、本書のクライマックスともいうべき量子力学と相対性理論に
  ついて述べたくだりを軸として、数式はあまり多く出さず簡潔に触れるに留
  め、その魅力をコンパクトにまとめて紹介している。
感想:あのあこがれの「ファインマン物理学」へのスターターガイドというところ
  であろうか。これを見ているうちに、本物に挑戦したくなって来た。・・・・
  といいつつも、なかなかそうはいかない。結局この後、この本の続編ともいう
  べき「電磁気学編」「力学・熱力学編」を読むことで満足しているところは、
  軟弱のそしりを免れない。
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量子宇宙への3つの道

書名:量子宇宙への3つの道
著者:リー・スモーリン
出版:草思社
内容:宇宙を考えることは、時空を考えることだ。時間とは、空間とは
  何か?古来、科学者はこの謎に挑み続けた。20世紀初頭に現れた
  相対性理論と量子論は、時空の見方を根底から覆してしまった。そ
  して21世紀。いま、その二つの理論を統合する試みが、さらに革
  命的な答えをもたらそうとしている!ホーキング理論から超ひも理
  論まで、最新の宇宙物理学の到達点を一望する、格好の入門書。
感想:量子重力論に草創期から取り組んできた著者が、最新の宇宙
  物理学の成果を分かり易く解説。宇宙を構成するのはプランク
  スケールの「振動するひも」であるとしてあらゆる相互作用を
  説明しようとする超ひも理論と、時空そのものが極めて小さな
  離散的要素の組み合わせであり、その相互関係(ネットワーク)
  こそが物理現象の本質であると説明するループ量子重力論につ
  いて多くのイメージ図やアナロジーを用いて分かりやすく説明
  している。

  著者は楽観的に、これら2つの理論は相互補完的に統一的な理
  論に成長していき、21世紀末には高校生にも教えられるよう
  な量子重力論になるであろうと予測している。相対性理論や量
  子力学がたどった流れを思えばあながち無茶な予想とは言い切
  れないが、それでも少々楽観的に過ぎるか。
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2006年01月25日

日本人なら知っておきたい武士道

書名:日本人なら知っておきたい武士道
著者:武光 誠(明治学院大学教授)
出版:河出夢新書
内容:新渡戸「武士道」から抜け落ちた、重大な観点とは?「潔く死ぬ」という
  精神は、武士道の本質なのか?武士の起こりにまで遡って検証すれば、江戸
  期以後為政者によってゆがめられた武士道の意外な全容が明らかになる。

  誤解に満ちた武士道を、気鋭の学者が探求する!(表紙の紹介文より)
感想:「武士道」といえば新渡戸の本が有名であるが、本書ではその内容を分析
  し、キリスト者である新渡戸氏流の整理のしかたに一定の理解を示しつつも、
  その内容は中国の儒教的な考え方、特に朱子学を機軸としてアジア全体の思
  想とひとからげになっている問題点を指摘する。

  その上で、日本古来の神道的世界観を踏まえて著者独自の「真の武士道」を
  紹介。近世に近づくにつれて政治的な理由から少しづつゆがめられたり不自
  然に美化されたりしてきた歴史を踏まえ、和の心を再確認するべきであると
  説く点には、共感できる点は多々ある。ただ、手塚治虫の漫画に関して命を
  軽視していると批判的にコメントしている点には同意しかねる。
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2006年01月22日

ワンダフル・ライフ〜バージェス頁岩と生物進化の物語

書名:ワンダフル・ライフ〜バージェス頁岩と生物進化の物語
著者:スティーヴン・ジェイ・グールド
出版:早川書房
内容:1909年に発見されたバージェス古生物群。当初は従来の分類に従い節足
  動物と考えられたそれら生物群は、実は既存の分類体系には全く収まらな
  いものだった。しかもその多様性は、これまでの生物進化論の常識である
  「古い時代ほど生物は単純で多様性が少なかった」という考えに全面的な
  見直しを迫るものであった・・・・。進化生物学の旗手・グールドが
  1989年に著した、伝説的名著。
感想:古生物学・進化論の論客が書いた、1989年に書かれた(日本語版1993年)
  伝説の名著。これを読み進むにつけ、カナダ・ブリティッシュコロンビア
  州に行きたくなった。機会があったら是非、バージェス頁岩をこの目で見
  たいものである。(スミソニアンのほうが手軽か。)

  2000年に出た、この文庫本版ではその後の定説変更があとがきに追記されて
  おり大変参考になる。正体不明の新動物門とされた種がいくつも既知の分類
  に戻されるなどだいぶ見直しが進んでいるが、驚異的な生物世界だったこと
  には疑いの余地がないのだから。2002年にグールドは亡くなったが、彼も
  草葉の陰でその説の変動を興味深く見守っているに違いない。
posted by 半端者 at 22:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

新しい生物学の教科書

書名:新しい生物学の教科書
著者:池田清彦
出版:新潮文庫
内容:本書は、現代生物学の諸領域について、その最前線での考え方を一冊で
  概観できるように書かれたものである。科学雑誌「サイアス」に1999年か
  ら2000年にかけて連載された記事をもとにまとめ、2001年に単行本化され
  たものの文庫版。
感想:生物学のリテラシーを身につけるのにうってつけの好著である。現時点
  においても、十分最新の内容と言えるように思える。教科書らしく、内容
  は「種」「遺伝」「性」「進化」「生物多様性」「免疫」など22章のテー
  マに分け、それぞれ章ごとのまとめも盛り込んだ、大変分かりやすいもの
  である。

  高校の生物教科書での記載比較なども通して、生物学をいかにして教える
  かについて筆者の考えがよく伺える。別途2章を費やして、中学・小学での
  理科の教科書についても論評していることも特筆すべき点だ。一応読了は
  したものの、是非時間を置いて、再度読んでおきたい。学生時代、暗記モノ
  と敬遠し生物学が苦手だった私にとって印象的な本である。

posted by 半端者 at 22:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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