2010年12月23日

色々



  


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2007年10月01日

時そばの客は理系だった

書名:時そばの客は理系だった〜落語で学ぶ数学
著者:柳谷晃
出版:幻冬舎新書
内容:落語の噺には、数学や科学のネタが満載されていた!「親
  子酒」は「クレタ人のパラドックス」であり、「一目上が
  り」は「等差数列と等比数列」を解説。「千早振る」は「演
  算の法則」で、「こんにゃく問答」は「非ユークリッド幾
  何学」、「日和違い」は「カオス理論」でもある。

  ネタ作りは数学のわかる落語家・三遊亭金八と林家久蔵が担
  当。笑っている間に身につく数学の智恵26席、はじまり、は
  じまり〜!!(以上、裏表紙のあおり文句そのまま)

感想:著者は早稲田大学理工学部で数学博士課程修了という方。
  母方の実家が七代目林家正蔵とお隣同士だったということで
  落語にも詳しく、若手落語家とも交流があった。そこで江戸
  時代における数学(和算)の話題と落語を絡めた本を書いて
  みてはどうか、というアイデアが浮かび、実現したのが本書
  であるとのこと。

  これがなかなかに面白いのである。あおり文句にある関係は、
  ちょっと見にはすさまじいこじつけの連続なのだが、ネタの
  背景説明とか口上だけだと分からない寄席での見所などをう
  まく絡めて楽しませているうちにちゃっかり数学的な考え方
  を体験できるという、実に軽妙な、読ませる本である。

  数学不得意な人にも大いに楽しめると思う。

  ただ、やはり落語というものは日本語の芸。日本語をより日
  本語らしく読ませるのは、やはり縦書きである。「こんにゃ
  く問答」とかを横書きで読むと、どうも違和感があっていけ
  ない。だから、本書が「横書き」で出版されていることには
  首を傾げざるを得ない。
posted by 半端者 at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ウルトラ・ダラー

書名:ウルトラ・ダラー
著者:手嶋龍一
出版:新潮社
内容:日本各地から忽然と姿を消した7人の「印刷工」、その前
  後に東京湾に出没していた工作船、マカオでの資金洗浄、外
  務省高官の「背信疑惑」、日米朝・そして中国が仕掛ける危
  険な情報戦争・・・。

  著者が様々なルートから入手した機密情報(インテリジェン
  ス)をつなぎあわせ、巨大な国際的陰謀の構図を迫真の筆致
  で描き出した、驚愕の「ドキュメント・ノベル」。

感想:著者は、NHKの前ワシントン支局長で、2005年からフリ
  ーのジャーナリスト。これまでに培った東アジア・ヨーロッ
  パ・アメリカにまたがる膨大な人脈からもたらされた貴重な
  情報(インテリジェント)の数々をもとに、迫真の「ドキュ
  メント・ノベル」に仕立てたのが本書である。

  北朝鮮による拉致事件、同国要人の不法入国事件、偽札事件
  などなど、現実の報道と見事に符合するエピソードの数々を
  見るにつけ、いったいどこまでが事実でどこまでが脚色なの
  か分からなくなる。だが、確かに一般人のうかがい知れない
  ところで今日も過酷な情報戦が繰り広げられ、日本の国益は
  確実に損なわれていることは間違いなさそうだ・・・。

  一応主人公としてBBCの特派員(その実英国諜報部のエー
  ジェント)が据えられて、彼を巡り一癖もふた癖もある面々
  が活躍するエンターテインメントとしての側面も確かにある
  が、これは小説なのだろうか、と思わずにはいられない。結
  末の思わせぶりな(というか、尻切れトンボととしか思えな
  い)展開を見れば、これは単に情報ソースに迷惑がかからな
  いようにするために登場人物を仮名にしたり、細部にフィク
  ションを織り交ぜた「ノンフィクション」としかいいようが
  ない。ただそう明言したらえらいことになるだろう。

  「ドキュメント・ノベル」とは、よくぞ銘打ったものよ。
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アイス・ステーション

書名:アイス・ステーション(上/下)
著者:マシュー・ライリー/泊山梁・訳
出版:ランダムハウス講談社
内容:アメリカが南極に持つウィルクス氷雪観測基地からSOS
  が発信された。その内容はなんと、海中洞窟で氷に埋もれた
 「宇宙船」を発見したが、何者かに襲撃され多数の死者が出た
  というのだ。シェーン・スコーフィールド中尉、コールサイ
  ン「案山子(スケアクロウ)」が隊長を務める米国海兵隊偵
  察部隊が急遽救援に向かったところ、基地に到着するやいな
  やフランスの戦闘部隊からの奇襲攻撃を受ける。ここに、謎
  の黒い宇宙船を巡る国際争奪戦の幕が開く!・・・

  豪州の若手ライターが描く、アイデアてんこもりのジェット
  コースター小説。

感想:えらくぜいたくな小説である。のっけからいきなり、海底
  洞窟の中から「宇宙船発見」などという大風呂敷を広げたか
  と思えば数ページもいかないうちに死体の山が築かれるわ、
  特殊部隊同士の盛大なドンパチが起きるわ、居合わせた古生
  物学者の娘(12歳)を守りつつの脱出行はあるは、「普通死
  ぬだろ、こんな状況では」というような絶体絶命の危機に1
  ページごとに見舞われてはどうにか切り抜けていくスーパー
  ヒーローの活躍はあるわ・・・

  ハリウッドなら大喜びで映画にしたがるに違いない、典型的
  なジェットコースター小説。ま、こういうのもたまにはいい
  だろう。しかし、こんなのばかり読んでいたらアホになりそ
  うなので、細かいところはあまり突っ込まないことにする。

  解説によると、この「スケアクロウ(案山子)」を主人公に
  した続編が既に2本あるそうな。

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ハイドゥナン

書名:ハイドゥナン(上/下)
著者:藤崎慎吾
出版:早川書房
内容:西暦2032年。未曾有の地殻変動によって、南西諸島に沈没の
  危機が迫っていた。最悪の場合、沖縄本島も含む島々が海面下
  に没するかもしれない。この危機にあたり、人命よりも領海=
  海中資源喪失に対応することを密かに優先する日本政府。それ
  に反発した植物生態学者・南方洋司、地質学者・菅原秀明ら
  6人の科学者達は極秘のプロジェクトを開始する。

  一方、与那国島の巫女・後間柚は不吉な啓示を受ける。「琉球
  が危ない。琉球の根を掘り起こせ。」・・・そして、「音に色
  を視る」共感覚を持つ青年・伊波岳志が柚と出会ったとき、運
  命の輪が音を立てて回り始める。地球科学・生命科学の様々な
  アイデアを大胆に駆使した、SF大作!
感想:表紙のあおり文句は「日本沈没をしのぐ、日本SF史上最高
  の科学小説」とあるが、それはちょっとおおげさであろう。
  確かに南西諸島沈没へのプロセスと、それを「阻止する」ため
  の原理・アイデアはかなり斬新であるし、実在の潜水調査船
  「しんかい6500」とか海底掘削船「ちきゅう」についての
  綿密な取材から描かれたそれらの後継機が活躍する様はすごい。

  しかし、それらアイデアを結びつける様々な架空テクノロジー
 (共感覚と量子的記憶、アカシックコードの科学版ともいうべき
  ISEAC=圏間基層情報雲理論)がいまひとつ書き込みが
  足りないのが残念である。とりわけ、裏のテーマともいうべ
  き「エウロパ探査」に関する部分とのストーリー的結びつけが
  不十分にしか見えないと言う点が実に不満。

  ただこのISEAC理論そのものはすごく魅力的なテーマだと
  思うので、是非今後これを様々な角度から発展させて欲しい。

  ちなみに、ハイドゥナンというのは南与那国島、という意味。
  与那国島の南方にあるとされる理想郷であり、仏教的に言え
  ば西国浄土にあたるものと思えばだいたい間違いないだろう。

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蝕・太平洋戦争

書名:蝕・太平洋戦争(1)〜(3)
著者:林譲治
出版:コスミックノベルズ
内容:昭和16年9月、京都帝国大学の川島教授は奇妙な天文現象を観測した。目立った天体の
  ない宇宙の一角より非常に強力な放射線が発せられているのだ。その直後、全世界に奇怪な
  放送が受信された。それは何と、3ヶ月後の12月8日未明、大日本帝国が真珠湾に奇襲攻
  撃をかけ、日米開戦に至ったことを伝えるものだった。未来からの怪電波は、世界情勢を思
  わぬ方向へと導くことになるのだが・・・



感想:電波により過去と未来がつながるというアイデアは映画にもなったが(邦題「オーロラの
  彼方に」)、本編は基本的に与えられた未来電波という架空の条件に基づき現実の歴史情勢
  がどう変わるかに焦点を当てて架空戦記に特化したもの。



  家族愛を中心に据えた映画では深く突っ込まなかった、「なぜ電波が届くのか」について量
  子力学上の多世界解釈も絡ませてちょっと面白いやりとりなども読める。受信したい側が自
  分にとって都合のよい未来に関する電波を受信することが、結果的に戦争を思うような方向
  に導くことになるというところが、一味違った面白さである。

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2007年03月21日

神は沈黙せず

書名:神は沈黙せず(上/下)
著者:山本弘
出版:角川文庫
内容:幼い頃に理不尽な災害で両親を失って以来、家族で信仰
  していた神に不信感を抱くようになった、和久優歌。やが
  てフリーライターとして活動を始めた彼女はUFOカルト
  へ潜入取材中、空からボルトの雨が降るという超常現象に
  遭遇する。

  そしてその兄、和久良輔。コンピューター上での人工生命
  進化について研究を重ねていた彼は、「『神』の実在につ
  いて論理的に証明できた」と言い残し、失踪してしまう。
  おりしも世界中で頻発し始めた超常現象に世界が混迷の極
  に達する中、兄の行方を追う優歌もまた、「神」の正体に
  戦慄する。・・・・

  あらゆる超常現象の報告、人工知能、人工生命、進化論、
  複雑ネットワーク理論、社会論、歴史論、そしてもちろ
  ん宗教など幅広い領域に渡る膨大な情報を駆使して「論
  理的にありえる神」の解明に挑んだ、一大エンターテイ
  ンメント!
続きを読む
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日本列島は沈没するか?

書名:日本列島は沈没するか?
著者:西村 一・藤崎慎吾・松浦晋也
出版:早川書房
内容:リメイク映画化で話題となった小松左京往年の傑作
  「日本沈没」。当時最新の科学知識をもとに描かれた
  この災害は、どこまでが科学的事実に基づいており、
  どこからがフィクションなのか?それとも、ありうべ
  き未来なのだろうか?

  また、現代の惑星科学はどこまでこの地球の仕組みに
  ついて迫ってきているのか、そしてそのための最新技
  術とは?

  本書では、気鋭のSF作家3人が惑星科学のダイナミ
  ズムを様々な角度から分析し、最先端技術やそれによ
  り得られた最新の知見をもとにその可能性を徹底検証
  してみせている。あわせて、現実の地球物理学研究の
  最先端現場レポートも豊富に盛り込まれている。SF
  ファン・科学ファン垂涎の一冊である。

感想:リメイクされた映画「日本沈没」についての評価を
  知人から聞いたところ、「スペクタクルシーンのSFX
  にはそれなりに見るべきものがあるものの、原作にあ
  る文明論の深遠さも、前の映画版で描かれた人間ドラ
  マの厚みも感じられない。わざわざ見なくてもいいよ。」
  とのことであった。

  予告編を見た限りでの私の印象どおりであり、その映画
  にあわせてやっつけで描かれた本だとすれば、この本も
  あまり期待してはいかんか・・・などと思いつつ手に取
  ったのが本書である。しかし、これはどうやら違う。
  そもそも企画としては全く独立に立ち上がったものとの
  ことである。

  それに、本書ではもっぱら地球物理学の最新知見に基づ
  き、大真面目に「日本列島が、どうやったら科学的に説
  得力ある方法で、かつドラマチックに沈むか?」という
  問題意識で分析をしてみせるのがメインテーマである。
  まさにSFマニア大喜びの知的エンターテインメントで
  あった。

  それにしても、こんなにも日本列島を沈めるのが大変と
  は思わなかった。本書によると、日本列島の基盤となっ
  ている部分はマントルや海底プレートより軽いため、単
  にプレートが移動してマントル下へ引きこもうとしても
  おいそれとは沈まないのだ。それを押してどうやって沈
  む理屈をつけたか?その辺は実物を読んでのお楽しみで
  ある。

追記:著者のひとり、藤崎氏は昨年(2005年)、まさにその
  地球物理学的知見をフルに取り入れた小説「ハイドゥナ
  ン」を発表しており、本書の出発点はその内容のもとと
  なった現実の地球科学に関する解説書を書きたいという
  願いからだったのだそうだ。どうやら、この小説も読ま
  ねばならないようである。
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2006年10月29日

薬師寺涼子の怪奇事件簿シリーズ

書名:薬師寺涼子の怪奇事件簿シリーズ
著者:田中芳樹
出版:光文社、講談社、祥伝社
内容:薬師寺涼子、27歳。警視庁刑事部参事官・階級は警視。アジア最
  大の警備会社JACESの社長令嬢。東大法学部卒、国際刑事警察
  機構出向の経歴を持ち、語学堪能。容姿、頭脳、運動神経、そして
  財力。いずれをとっても完全無欠のスーパーレディ。

  ただし、その辞書に「良識・協調心」という文字はない。モットー
  は「勝てば官軍」「悪党に人権なし」「世界はアタシのために回っ
  ている」などなど・・・。天下無敵の美しき傍若無人、人呼んで
  「ドラよけお涼(ドラキュラもよけて通る)」(注1)の行くとこ
  ろ、常に人知を超えた怪奇な事件が巻き起こる。忠実なる部下、
  否シモベ?の泉田準一郎警部補を従えた彼女の常識外れの活躍が、
  今日も始まる!!

  3つの出版社にまたがり、現在7冊の新書が発行中。
  (実は垣野内成美氏によるコミック版もお勧め)

感想:田中芳樹氏を私が始めて知ったのは、今やSF長編シリーズの古
  典となっている「銀河英雄伝説」の作家としてだった。中国戦記小
  説を彷彿とさせる壮大な架空の歴史小説に魅せられ、思わず大学生
  協で衝動買いしてしまったのを思い出す。(ちなみに当時はまだ正
  伝3巻くらいまでしかでていなかったと思う。)

  そんな田中芳樹のもうひとつの側面を見せてくれるのが、このシリ
  ーズである。その物語構造は、まさに典型的なライトノベル。極端
  で非現実的なキャラクター設定、彼女を取り巻く一癖もふた癖もあ
  る面々と、毎回起こる奇想天外な怪奇事件、そして主人公の圧倒的
  な力による問答無用の事件解決は、ある意味ワンパターンと切り捨
  てられかねない。しかし、そこがまたいいのである。

  最近の小説における主人公の定番とも言うべきトラウマというもの
  が、彼女には全く、感じられない(注2)。雲ひとつない晴天に輝
  く真夏の太陽のような比類なき明るさ、自分の可能性に一切の疑問
  を持たない彼女の徹底したオプティミズムは、とても痛快である。

  もちろん、彼女は単にカッコいいだけではない。物語は一貫して部
  下の泉田クンの視点から語られているため明言こそされないが、お
  涼が彼を「かなり憎からず」思っていることが至るところに見て取
  れる。彼女をどんな局面でもしっかりサポートする有能ぶりに反し、
  その方面にはとんと朴念仁なシモベに時々いらだっているところが
  また、妙に少女的でかわいいのである。

  御用とお急ぎでないライトノベルファンの方なら、きっと喜んで読
  んでもらえると思う。

 (注1)彼女の通り名「ドラよけ」というのは、明らかに神坂一氏に
  よる人気ファンタジーシリーズ「スレイヤーズ」の主人公・天才魔
  道士リナ・インバースの通称「ドラまた」(ドラゴンもまたいで通
  る)から来ているものだと思われる。このことに触れた解説を他に
  見たことがないのはなぜ?

 (注2)無敵を誇る彼女にも、一人だけ苦手な相手がいる。番外編の
  短編に登場するその人、それは実の姉・絹子である。
(参考:「女王陛下のえんま帳〜薬師寺涼子の怪奇事件簿ハンドブック
(光文社)」

新書版リンク:

番外編など:

コミック版リンク:

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2006年10月02日

数学的にありえない(上/下)

書名:数学的にありえない(上/下)
著者:アダム・ファウアー/矢口誠・訳
出版:文芸春秋
内容:数学の天才でありながらいまや人生破滅寸前の男、デヴィット・
  ケイン。彼を悩ます神経失調症には大きな秘密が隠されていた。そ
  れは世界を根底から覆す、彼の「能力」が芽吹く前兆だったのであ
  る。その秘密をを狙う政府機関、「科学技術研究所」。彼らは強大
  な権力を駆使してケインを追い始めた。

  彼の「能力」とは何か?謎の研究を続ける科学者トヴァルスキーの
  目的は?慎重に張られた伏線が、ジェットコースターのような息も
  つかせぬアクション・サスペンスを引き起こす。その先にある者は
  なにか??前代未聞、まったく新しいノンストップ・サスペンスと
  して「第1回世界スリラー作家クラブ新人賞」を受賞した超高速
  サスペンス。
感想:もと統計学の講師にして数学の天才、デヴィット・ケイン。だが
  今は時折ひどい悪臭の感覚が襲うという神経失調症状と、ギャンブ
  ル依存症の末に抱えたマフィアからの1万ドルもの借金で、人生破
  滅の瀬戸際にあった。

  CIAの特殊工作員にして暗殺のエキスパート、ナヴァ・ヴァナー。
  2重スパイとして様々な情報を他国に売っていた彼女は、思わぬミス
  により某国工作員等から命を狙われるはめになる。

  謎の人体実験を続けるマッドな研究者・トヴァルスキーはついに被験
  者のジュリアを事故で殺してしまう。死の直前、彼女の残した言葉は
  ひとつ。「デヴィット・ケインを殺しなさい」追い詰められたトヴァ
  ルスキーはそれを啓示と考えてか、行動を開始する。・・・

  無関係に見える様々な事件が、数学・物理学・脳科学・その他の様々
  なガジェットを駆使して次々につながっていき、息もつかせぬノンス
  トップサスペンスに仕上げられているところは、あたかもダンブラウ
  ンのダヴィンチ・コードのようだ。余計な予備知識などなくても十分
  わくわくする、エンターテインメント小説だった。
以下ネタバレ感想:
posted by 半端者 at 02:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月25日

トリックスターズM

書名:トリックスターズM
著者:久住四季
出版:電撃文庫
内容:日本で唯一の魔学部を持つ大学・城翠大学の学園祭、2日目。周
  たち魔学部の面々は、ミステリ研究会主催のイベント「マスカレイ
  ド」に参加していた。主催者が主催者なだけに、ただの仮面舞踏会
  ではない。会場にて突如起きた殺人事件、その犯人探しを参加者一
  同が挑戦するという推理イベントだ。

  てんでにコスプレをしてイベントを楽しむ面々に混じり、周の心は
  冴えない。周がまどろみの中で見た予知夢は、その会場で本当の殺
  人事件が起きることを示唆していたからだ。犯人は分かっている。
  問題は、「いつ」「どこで」「誰が被害者になるか?」なのだ・・

  魔術が現代社会に実在する特異な世界観のもと、ますます快調に飛
  ばす作者がおくる、推理小説をかたどった魔術師の物語、シリーズ
  第四作。

感想:魔術が科学と同列のものとして、極めて現実的で論理的な体系・
  現代魔術として確立している世界を舞台にした、今回の作者のアイ
  デアは、過去の3作に比べぐっとあっさりした口当たりである。そ
  れは今回は、主題は魔術というより、100%の的中率を持つ周の
  「未来視」能力により分かってしまう「未来」に抗う、周の(そし
  て周囲の人間の)人間としての成長が主題といえるからだ。

  相変わらずおいしいところをかっさらってしまう佐杏冴奈先生の性
  格の悪さ(でもどこか憎めない)も、今回はぐっと抑えられている。
  あとがきによると次回でひとつのクライマックスがある予定との
  こと、今回はそれへ向けての助走段階というところであろうか。
posted by 半端者 at 01:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月29日

アメリカ第二次南北戦争

書名:アメリカ第二次南北戦争
著者:佐藤賢一
出版:光文社
内容:2013年4月9日。アメリカ南西部の16州は「アメリカ連合国」とし
  て「アメリカ合衆国」からの独立を宣言した。約150年ぶりに起きた
  アメリカ合衆国の内乱は、2年後の両陣営による暫定的休戦協定を
  もって、つかのまの平穏を得た。しかし、人種差別・貧富の差・宗
  教対立といった大きな矛盾から生じたこの国の対立は、2016年現在
  未だ解決には程遠い。同年7月4日、ジャーナリスト森山悟はロスア
  ンジェルス国際空港に降り立った。自ら生み出した社会の矛盾に苦
  悶するアメリカの姿を見極め、日本の、そして世界の取るべき道を
  探るために。・・・

  1999年に直木賞を受賞した著者が鋭い批評眼をもって描く、起こり
  えるかもしれない明日の世界。

感想:「やや乱暴に譬えてしまえば、アメリカは成功したオウム真理教
  なのです。アメリカ合衆国というのは、恐ろしく巨大な『カミクイ
  シキ』なんですよ」・・・このショッキングなせりふは、本書の帯
  に引用された、本作中のある登場人物が吐く言葉である。これこそ、
  アメリカという国の病的な面を見事に言い表した、至言と言える。

  旧ヨーロッパ世界で少数派として疎まれた人々がその反発から団結
  し、自分たちこそ「選ばれた民である」と思い込んで自分たちの基
  準に合わせないもの即ち「敵である」とする幼稚な選民思想にどっ
  ぷりひたって作り上げた新興宗教団体。それこそがアメリカである
  と。本書では、そうした視点から「合衆国」「連合国」双方から徹
  底的にステロタイプなWASPをこれでもかというほど登場させる。
  いくらなんでもここまで間抜けなわけないだろ、というくらいに。

  そして本書におけるアメリカの行く末は、極めて暗い。停戦は程な
  く破棄され、国際社会から見捨てられ、いつ果てるとも知れない内
  戦の続く焦土と化していく。全てアメリカ人が自ら選んだ道である。
  森山悟は本書の終盤で、その収拾には一時的な国連による委任統治
  を経た小国への分割と、各国の主権保証しかないと、結論している。

  もちろんこれはあくまで、アメリカの暗い面のみを誇張したフィク
  ションに過ぎない。第一、国際情勢が非現実的。こんな異常事態に
  日本政府、とりわけ外務省がまともな外交対応できるとは信じられ
  ないし、中国が黙って紳士的態度を貫くはずもない。まず間違いな
  く、日本は中国とロシアの食い物にされてぼろぼろになっているこ
  とだろう。国連で事態収拾の中核を担う??無理無理\(ToT)/

 (私の書評読者に政府関係者が万一おられ、気分を害されたのなら深
  くお詫びする。所詮、門外漢のたわごとである。どうか、『実績を
  持って』私のこの偏見を打ち破ってほしい。)

  そういうわけで少々暴論に過ぎる面はあるが、銃やドラッグ、人種
  差別、はなはだしい貧富の差というかの国の問題点を痛烈に告発す
  る評論としても、子気味良いアクションエンタメ(もちろんアメリ
  カンサイズ美人つき(爆))としても面白い。

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2006年08月27日

ダイヤモンド・エイジ

書名:ダイヤモンド・エイジ(上・下)
著者:ニール・スティーブンスン/日暮雅通・訳
出版:ハヤカワ文庫
内容:近未来、ナノテクとネットワーク技術は世界の様相を一変させて
  いた。地域国家は消滅し、人種・宗教・主義・趣味を共有するもの
  が構成する多種多様な<国家都市>に細分化されていた。上海に住
  む「ネオ・ヴィクトリアン」の「貴族」であるフィンクル・マグロ
  ウ卿は、旧態依然の教育に疑問を抱き、一人の技術者ハックワース
  にあるソフトの開発を依頼する。

  愛娘のために、ナノテクの粋を駆使して開発された、画期的な教育
  用インタラクティブソフト「初等読本」がそれである。ハックワー
  スは誘惑にかられ、自らの娘のためにも一部、そのコピーを作って
  しまうのだが、それはひょんなことから貧困にあえぐ薄幸の少女
  ネルのもとに渡る。やがて、ネルは現実と仮想世界にまたがる壮大
  な冒険の旅にでることになるのだが・・・・
感想:以前読んだ文庫4分冊の大作「クリプトノミコン」をものした21
  世紀SFの旗手、ニールスティーブンスンの1996年度ヒューゴー賞
  ・ローカス賞受賞作。ナノテクのイメージを駆使した膨大なアイデ
  アと、数多くの個性的な登場人物・組織の思惑を絡ませた巧みなス
  トーリー展開には、ただただ目を奪われるばかりだ。

  非力でどん底の貧困にあえぐ少女ネルの前で語られる、「若き淑女
  のための絵入り初等読本」の主人公「プリンセス・ネル」(インタ
  ラクティブなので、読者のネルの名前が反映されるのだ!)の数奇
  な冒険と成長が、いつしかネル自身の成長とも重なっていく劇中劇
  の面白さも群を抜いている。

  自立して強く生きる新世代の童話ヒロイン「アリーテ姫」の活躍を
  描いた「アリーテ姫の冒険」を思いだしてしまった。成長後のネル
  の活躍がいささかスーパー過ぎるきらいはあるが、大いに楽しめた。

  もちろん、作者お得意の暗号がらみのアイデアとかも満載。ブレイ
  クした最初の作品「スノー・クラッシュ」のほうも読まねば・・・
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2006年08月10日

トリックスターズD

書名:トリックスターズD
著者:久住四季
出版:電撃文庫
内容:日本で唯一の魔学部を持つ大学・城翠大学に、今年も学園祭の季節
  がやってきた。学園祭を様々に楽しもうとする、客員教授を務める魔
  術師、佐杏冴奈と、そのゼミに所属する天之原周(あまね)ら。

  しかし、ただで済むはずもなく早速起きる事件。得体の知れない結界
  に建物ごとすっぽり覆われてしまった学園棟に閉じ込められた周と親
  友の凛々子は、共に閉じ込められたミステリ研究会の面々とともに、
  現実と小説が交錯する奇妙な空間の探索と脱出に挑むのだが?・・・

  半年足らずの間に2つの怪異な事件に巻き込まれた周たちの物語であ
  った前2作を受けて作者がおくる、推理小説をかたどった魔術師の
  物語、シリーズ第三作。

感想:魔術が科学と同列のものとして、極めて現実的で論理的な体系・現
  代魔術として確立している世界を舞台にした、作者の手を変え品を変
  えたアイデアには毎度感心させられる。ネタ切れの日も近いかと思っ
  ていたが、どうしてどうしてたいしたものである。小説内小説を用い
  たトリックそのものはいまさらという気もしないではないが、各キャ
  ラクターの特徴と言動を生かして軽妙に読ませる語り口は、緻密に設
  定された世界観とあいまってとても心地よい。

  周の魔術師としての才能について本格的開花のきざしも出てきたよう
  で、そろそろ第一作以来の敵役との再対決が楽しみである。
以下ちょっとだけネタバレ
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日本沈没 第二部

書名:日本沈没 第2部
著者:小松左京+谷甲州
出版:小学館
内容:ユーラシア大陸の極東に存在し、特異な文化を2000年に渡り育んで
  きた、島国「日本」。その国土が地球規模の地殻変動の影響でわずか
  1年足らずの間に日本海溝の底へ引きこまれ、海中に没してしまって
  から、25年の歳月が過ぎた。国土を失い流浪の民となった日本人た
  ちは、世界各地に散り散りとなり、様々な軋轢に悩まされつつも、そ
  の高い技術力・経済力と勤労をいとわない気質を失うことなく、それ
  ぞれのやりかたで地域の開発に取り組んでいた。

  しかし、日本人は、いや世界の人々は、25年前の「異変」がさらな
  る大きな災厄の始まりに過ぎなかったことにまだ気づいていない。

  高度成長期の日本人の心を震撼せしめた小松左京伝説の傑作
  「日本沈没」、その待望の第2部が、33年の歳月を経て今、登場。

感想:1973年、当時最新の地球物理学的知見であったプレートテクト
  ニクス理論から大胆に着想し、国土の沈没という未曾有の災厄と、
  それに立ち向かう日本人たちの姿を描いた傑作「日本沈没」は、当時
  映画にもなり大変な話題作となった。いわゆるパニック小説の走りと
  いう表面的な見方もされたが、この作品は単なる「異変に伴う社会シ
  ミュレーション」というだけでなかった。

  「日本人とは何か」、その文明観のありかたを問いつつ、ひとつの民
  族の興亡を描く大叙事詩になるはずだった。実際小松左京氏の当初か
  らの構想がそのようなスケールのものだったことは、もともとの作品
  タイトルが「日本漂流」だったことからも明らかである。しかしあま
  りのスケールに、とりあえず日本人が国土を失ったところまでを第一
  部として完結して以来、長きにわたってその執筆は頓挫したまま
  だった。

  小松左京もはや70歳を超え、単独で長編小説を書く体力もさすがに
  ない。しかし彼の後を継ぐSF作家たちなら、その後を継ぐことがで
  きる。そこで2003年11月、プロジェクトチームが立ち上がる。それか
  ら2年半の歳月を費やし、小松左京の提示した構想を森下一仁氏他気
  鋭の若手SF作家たちが練り上げ、谷甲州がとりまとめてついに完成
  したのが、本書である。

  33年の歳月を経て急速に進歩した地球物理学の成果も踏まえ、大規模
  な異変後の地球レベルの環境分析も踏まえた分析は緻密であり、目を
  離せない。ところで、ネタバレになるので詳しく書けないが、この
  作品、エピローグに希望はあるものの決して明るい結末ではない。
  どこか物悲しい、寂寥観も感じさせる作品となっている。文明論的に
  言えば、「この展開ならこうなるだろう」と想像はしていたのだ
  が・・・。だが、心に残る作品であることは間違いない。

  余談だが、私はアンハッピーエンド小説はあまり好きではない。特に
  登場人物がことごとく後ろ向きで、不幸に対してただただ無力さをさ
  らけ出すだけの作品(具体例を挙げるのは、差し控えよう)には、
  例え世間一般に名作と言われるものであっても虫唾が走る。本作品
  は、決してそのようなものではなかったことは、何よりの喜びだ。
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2006年07月16日

コラプシウム

書名:コラプシウム
著者:ウィル・マッカーシイ/嶋田洋一・訳
出版:ハヤカワ文庫
内容:マイクロ・ブラックホールをグリッド状に配置し、安定させた「超光
  速伝導物質・コラプシウム」。文明を一変させたこのトンデモ発明を
  成し遂げた天才科学者・ブルーノ・デ・トワジが、太陽系女王国で起
  こった摩訶不思議な事件を、次々に解決していく!トンガ王朝を祖に
  持つ美貌の処女王・タムラとの淡いロマンスも交えつつ描く、ハード
  熱血・スペースオペラ。
感想:このタイトルとこのあおり文句なら、普通表紙は5,60年代のス
  ペースオペラ的な挿絵を思い浮かべる人も多いだろう。かくいう私も
  武部本一郎画伯の描くバロウズの火星シリーズにはしびれた口である。

  だが今は21世紀。創元推理文庫と並び硬派SFノベルの紹介で有名な
  ハヤカワSF文庫といえど、時代は・・・

  「萌え」  

  らしい。表紙の真ん中を占めるのは、どう見てもVRモノクルをつけ
  たツインテールの女子学生。いわく、小説の途中で起きた殺人事件の
  捜査を統括する捜査局長、ヴィヴィアンだという(爆)。彼女のオリ
  ジナルが死亡したため、過去の姿形の情報と本人の記憶バックアップ
  だけを頼りに、整合性が取れるよう最善の復元を行った結果がこれだ
  というのだが・・・・
  おい。かなり無理があるだろ、その設定(爆^2)

  絶対、アキバ方面からの電波を受けて書いたな、この作者。知識と経
  験はベテランの捜査局長なのだが、体は11歳そこそこのお子様なので
  ソーダを飲みながら指揮を取るし、時折肉体年齢相応の幼児性も表す
  というこのアンバランスさは、絶対そっち方面の影響であろう。主役
  のはずのブルーノはともかく、普通ならヒロイン格である女王タムラ
  が挿絵に出ないで彼女が表紙を飾るというのは傑作である。

  しかしもちろん、そんな軟派な部分とは別にハードSFとしての道具
  立てもばっちりである。コラプシウムもそうだが、究極のインテリジ
  ェント素材であるウェルストーンとか、ほとんどの交通手段を伝送に
  おきかえたファックス技術とか、人格丸ごとのバックアップを複数持
  つのが常識となっている社会で生じる様々な問題とか、アイデアは
  満載。ひさびさに現実逃避できる抱腹絶倒スペースオペラであった。
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2006年05月30日

鉄棒する漱石、ハイジャンプの安吾

本書は、確かどなたかのブログで見かけたために入手した覚えがあるのだが・・・どうしても思い出せない。



書名:鉄棒する漱石、ハイジャンプの安吾
著者:矢島裕紀彦
出版:NHK出版生活人新書
内容:器械体操の名人と評された夏目漱石。ハイジャンプの全国大会で優
  勝した坂口安吾。自称オリンピック候補の横光利一。いずれも文学史
  に名高い気難し屋の文士たちであるが、いずれもスポーツに関して思
  わぬ一面を持っていた。書斎や酒場の姿からは想像もつかない、文士
  25人の意外な一面を紹介するユニークな一冊。
感想:あの「坂の上の雲」に登場する病弱の俳人正岡子規が、実はベース
  ボールを愛してやまなかったというのは割とよく知られているが、漱
  石が鉄棒の名人だったというのは、実は初めて知った。ポケットに入
  れていた万年筆を、器械体操の最中にぽっきりと折ってしまったとい
  うエピソードにはびっくりである。

  本書ではこのほか、小説を批判されるより釣りの腕前を揶揄されるこ
  とのほうが腹が立ったというくらいその道に入れ込んでいた幸田露伴
  や、実は当時のプロボウラーに迫る実力を持っていた向田邦子、とい
  った意外なエピソードが満載である。どの文士から呼んでも面白く読
  める、気軽な一冊と言えよう。
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2006年05月06日

ヴィンランド・サガ

書名:ヴィンランド・サガ(既刊2巻)
著者:幸村誠
出版:講談社
内容:救世主がガラリアの地に現れてから最初の千年紀を迎えたころ、
  11世紀初頭。勇猛で名をはせるヴァイキングたちは、フィンラン
  ドからイングランドへとその勢力を伸ばしてきた。強いもののみ
  が全てを制する、戦士たちの世界。戦乱の時代に生まれた一人の
  少年は、父の敵を討つことを心に決め、戦士としての過酷な人生
  を歩み始めた。

  プラネテスでその名をはせたストーリーテラー・幸村誠がヴァイ
  キング遠征の歴史を、ひとりの少年の成長を軸に緻密に考証して
  描く、壮大なスケールの叙事詩。

感想:最近では、ヴァイキングがコロンブスに先立ちヨーロッパ文明
  圏からの先鋒として北米大陸にたどりついていたことが明らかに
  なっている。ヴィンランド、というのはその北米大陸のことを指
  す。結局ヴァイキングたちはアメリカ先住民との交流に失敗し撤
  退を余儀なくされたのだが、彼らヴァイキングの数奇な歴史は、
  我々の想像力をかきたてて止まない。

  そうしたスケールの大きな話とあわせて、主人公トルフィンの成
  長物語、彼が父親トールズの仇として挑み続けるアシェラッドの
  男っぷりもまた見逃せない。続きが楽しみなマンガのひとつである。

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2006年03月04日

巨翼の海原(上下)

書名:巨翼の海原(上下)〜連合艦隊加州戦記
著者:橋本純
出版:銀河出版
内容:ドイツの航空工学の奇才・ドクターリピッシュを日本に亡命させることに成功
  した、別な歴史を歩む日本。彼の天才的なアイデアは、グラウンドエフェクトを
  フルに活用した驚異的なペイロードを誇る超巨大飛行艇を完成させた。彼の亡命
  を画策した天才的戦略家である石原莞爾の野望は、ついに超巨大飛行艇部隊によ
  る、米国本土進攻を可能にしたのだ!

  歴史上初めて外国からの軍事侵攻を受けた、共和党のルーズベルトではなく民主
  党が政権を取っている米国の混乱と、崩壊。奇想天外、驚天動地、言語道断な妄
  想戦記。

感想:リピッシュ博士というのは実在の人物で、「巨大な機体で超低空を飛行するこ
  とで高度な安定性を持つ」航空機を構想したのも本当らしい。もしできたら面白
  かったとは思うが、いくらドイツから無制限に最高水準の頭脳流入を図ったから
  といって当時の日本のインフラ整備の遅れを埋めて、これほどの航空機を量産で
  きるはずもなし。

  妄想も妄想。デタラメもいいところの小説である。しかし、今の傲慢極まるアメ
  リカのことを思うと、天才的戦略家たる石原莞爾にいいように手玉にとられた
  かの国が、右往左往して世界から信用を失い、国際社会のトップから無様に脱落
  していく様は、妄想小説ながら大変痛快であった。
ついでに一言
posted by 半端者 at 02:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月09日

沖ノ鳥島爆破指令

書名:沖ノ鳥島爆破指令
著者:大石英司
出版:中央公論新社
内容:東京都沖ノ鳥島開発計画の柱として、領海問題の渦中にある無人島に移住
  した、元海上自衛隊隊員にして都庁職員の常滑亮と、その家族。海洋生態系
  の調査や気象調査・水温差発電の研究などに従事する技術者に混じって、釣
  りや「東京都・沖ノ鳥島ブログ」の更新にいそしむのどかな駐在公務員の
  日々は、長くは続かなかった。

  嵐の夜、突如来襲した謎のテロリスト集団に観測施設は占拠され、常駐して
  いた海上保安庁特殊警備隊隊員3名が死亡。隊長を含む居住者たちは人質と
  なった。ますます激しくなる嵐のさなか、「岩礁ごときを盾にとって広大な
  権益を主張し、環境を脅かす日本政府に鉄槌を下す」と宣言する自称環境保
  護闘争団体(もちろん某国肝いり)と、陸上自衛隊特殊部隊「サイレント・
  コア」との戦いが、ここに切って落とされた!!
感想:北緯20度25分、東経136度05分。東京から1700Km、小笠原諸島からも
  900kmも離れた絶海の孤島。島といいながら、満潮時には高さ1メートル
  弱の2つの岩礁が突き出るだけになる極めて頼りない、陸地である。

  しかし、この島のおかげで日本は40万平方キロという日本列島の面積をも上
  回る広大な排他的経済水域を確保できている、国土保全上重要な島でもある。
  その重大性にかんがみ、某「俺様国家」の横暴に対抗する意味を込めてか、
  この島は東京都の一部であると同時に、国の直接管理下にある。おりしも最
  近、沖ノ鳥島にて深層海流と海上の温度差を利用した発電技術の実地研究を
  行おうという計画も現実に動いているという事情もあってこの小説、妙にリ
  アリティを感じついつい引きこまれるように立ち読みしてしまった(いや、
  流し読みしただけで、後でちゃんと買いましたよ、ホント。)。

  撃退する側の陸自コマンド、プロに徹するテロリスト側の傭兵たちとの対決
  をもっと書き込んだらもっと面白かったかもしれないが、何しろ政治的に重
  大な話題だからなのか、あんまりリアルに書かずほぼ一方的にテロリストの
  野望は阻止される形に描かれているのは、ちょっと不満である。

  特にテロリスト側についている日本人のバカぶりには石を投げたくなった。
  とはいえ万一、某国の野望が実現してしまいましたなんていう結末だったら
  私はこの本を焚書していた
  であろう\(ToT)/

追記:無論これは一日本人としての感想であり、一地球市民の立場としては「そんなせせこましいことを考えている暇があったら、地球温暖化対策の足場として有効利用することを考えよう」ってことになるんですが。
posted by 半端者 at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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