2007年10月01日

理科年表をおもしろくする本

書名:理科年表をおもしろくする本〜理科年表読本
著者:宇野正宏・建畠朔弥・福士示・山縣朋彦
出版:丸善
内容:理科年表は、その内容さえ分かればとても面白いデータブ
  ックであるが、ただ漫然と見ただけではごちゃごちゃした数
  字の羅列に過ぎない。本書はその理科年表への「入門」を希
  望する方たちのため、様々な科学的テーマを拾い出し、実例
  と理科年表の内容を交えながら、今日とかくブラックボック
  スになりがちな科学の面白さをダイナミックに語る。

感想:科学的思考様式を重んじる人間にとって、バイブルに相当
  するものといったら「理科年表」をおいて他にはないだろう。
  科学者たちが何世紀にも渡り築き上げ、幾多の検証を潜り抜
  けてきた科学的知識に基づく客観的な事実を体系的に、具体
  的なデータとして整理してある理科年表は、オフィシャルな
  自然科学の集大成といえよう。

  しかしみかけは細かい数値の羅列であり、その意味すること
  を利用するのはもちろん、その一部でもきちんと理解するの
  は至難の技だ。本書はその、理科年表に並ぶ数表の意味が高
  校生程度にも理解できるよう分かりやすく説いている。本当
  はちゃんと手元に理科年表をおいて参照しながら(実際、要
  所要所で参照すべき理科年表の項目も明示しているのがすご
  い)読むのが効果的だろうとは思うが、結局流し読みしてし
  まったのは考えてみるともったいない。

  参考までに、目次の一部を紹介しておこう。どんな話が盛り
  込まれているかは、実際に読む時のお楽しみ。

  〇自転車ダイナモとエネルギー変換
  〇錆びるからこそ役に立つ鉄
  〇大きなことと小さなこと、大きな数と小さな数
  〇吸盤で大気圧を測る
  〇原子スペクトルで銀河の速さを知る
  〇ダヴィンチの「最後の晩餐」と運動星団

  などなど・・・
posted by 半端者 at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 硬めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

時そばの客は理系だった

書名:時そばの客は理系だった〜落語で学ぶ数学
著者:柳谷晃
出版:幻冬舎新書
内容:落語の噺には、数学や科学のネタが満載されていた!「親
  子酒」は「クレタ人のパラドックス」であり、「一目上が
  り」は「等差数列と等比数列」を解説。「千早振る」は「演
  算の法則」で、「こんにゃく問答」は「非ユークリッド幾
  何学」、「日和違い」は「カオス理論」でもある。

  ネタ作りは数学のわかる落語家・三遊亭金八と林家久蔵が担
  当。笑っている間に身につく数学の智恵26席、はじまり、は
  じまり〜!!(以上、裏表紙のあおり文句そのまま)

感想:著者は早稲田大学理工学部で数学博士課程修了という方。
  母方の実家が七代目林家正蔵とお隣同士だったということで
  落語にも詳しく、若手落語家とも交流があった。そこで江戸
  時代における数学(和算)の話題と落語を絡めた本を書いて
  みてはどうか、というアイデアが浮かび、実現したのが本書
  であるとのこと。

  これがなかなかに面白いのである。あおり文句にある関係は、
  ちょっと見にはすさまじいこじつけの連続なのだが、ネタの
  背景説明とか口上だけだと分からない寄席での見所などをう
  まく絡めて楽しませているうちにちゃっかり数学的な考え方
  を体験できるという、実に軽妙な、読ませる本である。

  数学不得意な人にも大いに楽しめると思う。

  ただ、やはり落語というものは日本語の芸。日本語をより日
  本語らしく読ませるのは、やはり縦書きである。「こんにゃ
  く問答」とかを横書きで読むと、どうも違和感があっていけ
  ない。だから、本書が「横書き」で出版されていることには
  首を傾げざるを得ない。
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ウルトラ・ダラー

書名:ウルトラ・ダラー
著者:手嶋龍一
出版:新潮社
内容:日本各地から忽然と姿を消した7人の「印刷工」、その前
  後に東京湾に出没していた工作船、マカオでの資金洗浄、外
  務省高官の「背信疑惑」、日米朝・そして中国が仕掛ける危
  険な情報戦争・・・。

  著者が様々なルートから入手した機密情報(インテリジェン
  ス)をつなぎあわせ、巨大な国際的陰謀の構図を迫真の筆致
  で描き出した、驚愕の「ドキュメント・ノベル」。

感想:著者は、NHKの前ワシントン支局長で、2005年からフリ
  ーのジャーナリスト。これまでに培った東アジア・ヨーロッ
  パ・アメリカにまたがる膨大な人脈からもたらされた貴重な
  情報(インテリジェント)の数々をもとに、迫真の「ドキュ
  メント・ノベル」に仕立てたのが本書である。

  北朝鮮による拉致事件、同国要人の不法入国事件、偽札事件
  などなど、現実の報道と見事に符合するエピソードの数々を
  見るにつけ、いったいどこまでが事実でどこまでが脚色なの
  か分からなくなる。だが、確かに一般人のうかがい知れない
  ところで今日も過酷な情報戦が繰り広げられ、日本の国益は
  確実に損なわれていることは間違いなさそうだ・・・。

  一応主人公としてBBCの特派員(その実英国諜報部のエー
  ジェント)が据えられて、彼を巡り一癖もふた癖もある面々
  が活躍するエンターテインメントとしての側面も確かにある
  が、これは小説なのだろうか、と思わずにはいられない。結
  末の思わせぶりな(というか、尻切れトンボととしか思えな
  い)展開を見れば、これは単に情報ソースに迷惑がかからな
  いようにするために登場人物を仮名にしたり、細部にフィク
  ションを織り交ぜた「ノンフィクション」としかいいようが
  ない。ただそう明言したらえらいことになるだろう。

  「ドキュメント・ノベル」とは、よくぞ銘打ったものよ。
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だます心 だまされる心

書名:だます心 だまされる心
著者:安斎育郎
出版:岩波書店
内容:「だまし」には大きな魅力がある。巧みな手品や小説、だ
  まし絵などは存分に楽しめる。しかしその魅力にのめりこん
  で、悪徳商法の被害など、危ういところへ連れて行かれるこ
  とも多い。さまざまな「だまし」のテクニックや狙いを紹介
  しながら、「だまされ」への道は何か、だまされないために
  はどんな姿勢が必要なのかを解説する。
 (以上、本書の帯より)
感想:著者の安斎氏は、大学時代に奇術サークルで活躍し、工学
  博士として大学で教鞭をとる傍ら「ジャパン・スケプティク
  ス」の会長を務めている。このスケプティクスとは「懐疑論
  者」という意味で、その会は「いわゆる超自然現象といわれ
  るものを批判的・科学的に究明する」ことを趣旨としている。
  そういう姿勢で人間の認識力を見た場合、人間がいかに簡単
  に「だまされ」の道に入ってしまうものなのかがよく分かる。

  本書では、古今東西の様々なオカルト的エピソード・手品の
  現象・詐欺事件などを例に取りながら、巧妙なだましの狙い
  ・テクニックを説明している。そしてマジックで楽しくだま
  される、というのとは違ういわゆる「悪意のだまし」をどう
  見分けるべきかについて、その心構え・姿勢について解説し
  ている。
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アイス・ステーション

書名:アイス・ステーション(上/下)
著者:マシュー・ライリー/泊山梁・訳
出版:ランダムハウス講談社
内容:アメリカが南極に持つウィルクス氷雪観測基地からSOS
  が発信された。その内容はなんと、海中洞窟で氷に埋もれた
 「宇宙船」を発見したが、何者かに襲撃され多数の死者が出た
  というのだ。シェーン・スコーフィールド中尉、コールサイ
  ン「案山子(スケアクロウ)」が隊長を務める米国海兵隊偵
  察部隊が急遽救援に向かったところ、基地に到着するやいな
  やフランスの戦闘部隊からの奇襲攻撃を受ける。ここに、謎
  の黒い宇宙船を巡る国際争奪戦の幕が開く!・・・

  豪州の若手ライターが描く、アイデアてんこもりのジェット
  コースター小説。

感想:えらくぜいたくな小説である。のっけからいきなり、海底
  洞窟の中から「宇宙船発見」などという大風呂敷を広げたか
  と思えば数ページもいかないうちに死体の山が築かれるわ、
  特殊部隊同士の盛大なドンパチが起きるわ、居合わせた古生
  物学者の娘(12歳)を守りつつの脱出行はあるは、「普通死
  ぬだろ、こんな状況では」というような絶体絶命の危機に1
  ページごとに見舞われてはどうにか切り抜けていくスーパー
  ヒーローの活躍はあるわ・・・

  ハリウッドなら大喜びで映画にしたがるに違いない、典型的
  なジェットコースター小説。ま、こういうのもたまにはいい
  だろう。しかし、こんなのばかり読んでいたらアホになりそ
  うなので、細かいところはあまり突っ込まないことにする。

  解説によると、この「スケアクロウ(案山子)」を主人公に
  した続編が既に2本あるそうな。

posted by 半端者 at 22:52| Comment(0) | TrackBack(1) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ハイドゥナン

書名:ハイドゥナン(上/下)
著者:藤崎慎吾
出版:早川書房
内容:西暦2032年。未曾有の地殻変動によって、南西諸島に沈没の
  危機が迫っていた。最悪の場合、沖縄本島も含む島々が海面下
  に没するかもしれない。この危機にあたり、人命よりも領海=
  海中資源喪失に対応することを密かに優先する日本政府。それ
  に反発した植物生態学者・南方洋司、地質学者・菅原秀明ら
  6人の科学者達は極秘のプロジェクトを開始する。

  一方、与那国島の巫女・後間柚は不吉な啓示を受ける。「琉球
  が危ない。琉球の根を掘り起こせ。」・・・そして、「音に色
  を視る」共感覚を持つ青年・伊波岳志が柚と出会ったとき、運
  命の輪が音を立てて回り始める。地球科学・生命科学の様々な
  アイデアを大胆に駆使した、SF大作!
感想:表紙のあおり文句は「日本沈没をしのぐ、日本SF史上最高
  の科学小説」とあるが、それはちょっとおおげさであろう。
  確かに南西諸島沈没へのプロセスと、それを「阻止する」ため
  の原理・アイデアはかなり斬新であるし、実在の潜水調査船
  「しんかい6500」とか海底掘削船「ちきゅう」についての
  綿密な取材から描かれたそれらの後継機が活躍する様はすごい。

  しかし、それらアイデアを結びつける様々な架空テクノロジー
 (共感覚と量子的記憶、アカシックコードの科学版ともいうべき
  ISEAC=圏間基層情報雲理論)がいまひとつ書き込みが
  足りないのが残念である。とりわけ、裏のテーマともいうべ
  き「エウロパ探査」に関する部分とのストーリー的結びつけが
  不十分にしか見えないと言う点が実に不満。

  ただこのISEAC理論そのものはすごく魅力的なテーマだと
  思うので、是非今後これを様々な角度から発展させて欲しい。

  ちなみに、ハイドゥナンというのは南与那国島、という意味。
  与那国島の南方にあるとされる理想郷であり、仏教的に言え
  ば西国浄土にあたるものと思えばだいたい間違いないだろう。

posted by 半端者 at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

蝕・太平洋戦争

書名:蝕・太平洋戦争(1)〜(3)
著者:林譲治
出版:コスミックノベルズ
内容:昭和16年9月、京都帝国大学の川島教授は奇妙な天文現象を観測した。目立った天体の
  ない宇宙の一角より非常に強力な放射線が発せられているのだ。その直後、全世界に奇怪な
  放送が受信された。それは何と、3ヶ月後の12月8日未明、大日本帝国が真珠湾に奇襲攻
  撃をかけ、日米開戦に至ったことを伝えるものだった。未来からの怪電波は、世界情勢を思
  わぬ方向へと導くことになるのだが・・・



感想:電波により過去と未来がつながるというアイデアは映画にもなったが(邦題「オーロラの
  彼方に」)、本編は基本的に与えられた未来電波という架空の条件に基づき現実の歴史情勢
  がどう変わるかに焦点を当てて架空戦記に特化したもの。



  家族愛を中心に据えた映画では深く突っ込まなかった、「なぜ電波が届くのか」について量
  子力学上の多世界解釈も絡ませてちょっと面白いやりとりなども読める。受信したい側が自
  分にとって都合のよい未来に関する電波を受信することが、結果的に戦争を思うような方向
  に導くことになるというところが、一味違った面白さである。

posted by 半端者 at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月21日

神は沈黙せず

書名:神は沈黙せず(上/下)
著者:山本弘
出版:角川文庫
内容:幼い頃に理不尽な災害で両親を失って以来、家族で信仰
  していた神に不信感を抱くようになった、和久優歌。やが
  てフリーライターとして活動を始めた彼女はUFOカルト
  へ潜入取材中、空からボルトの雨が降るという超常現象に
  遭遇する。

  そしてその兄、和久良輔。コンピューター上での人工生命
  進化について研究を重ねていた彼は、「『神』の実在につ
  いて論理的に証明できた」と言い残し、失踪してしまう。
  おりしも世界中で頻発し始めた超常現象に世界が混迷の極
  に達する中、兄の行方を追う優歌もまた、「神」の正体に
  戦慄する。・・・・

  あらゆる超常現象の報告、人工知能、人工生命、進化論、
  複雑ネットワーク理論、社会論、歴史論、そしてもちろ
  ん宗教など幅広い領域に渡る膨大な情報を駆使して「論
  理的にありえる神」の解明に挑んだ、一大エンターテイ
  ンメント!
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日本列島は沈没するか?

書名:日本列島は沈没するか?
著者:西村 一・藤崎慎吾・松浦晋也
出版:早川書房
内容:リメイク映画化で話題となった小松左京往年の傑作
  「日本沈没」。当時最新の科学知識をもとに描かれた
  この災害は、どこまでが科学的事実に基づいており、
  どこからがフィクションなのか?それとも、ありうべ
  き未来なのだろうか?

  また、現代の惑星科学はどこまでこの地球の仕組みに
  ついて迫ってきているのか、そしてそのための最新技
  術とは?

  本書では、気鋭のSF作家3人が惑星科学のダイナミ
  ズムを様々な角度から分析し、最先端技術やそれによ
  り得られた最新の知見をもとにその可能性を徹底検証
  してみせている。あわせて、現実の地球物理学研究の
  最先端現場レポートも豊富に盛り込まれている。SF
  ファン・科学ファン垂涎の一冊である。

感想:リメイクされた映画「日本沈没」についての評価を
  知人から聞いたところ、「スペクタクルシーンのSFX
  にはそれなりに見るべきものがあるものの、原作にあ
  る文明論の深遠さも、前の映画版で描かれた人間ドラ
  マの厚みも感じられない。わざわざ見なくてもいいよ。」
  とのことであった。

  予告編を見た限りでの私の印象どおりであり、その映画
  にあわせてやっつけで描かれた本だとすれば、この本も
  あまり期待してはいかんか・・・などと思いつつ手に取
  ったのが本書である。しかし、これはどうやら違う。
  そもそも企画としては全く独立に立ち上がったものとの
  ことである。

  それに、本書ではもっぱら地球物理学の最新知見に基づ
  き、大真面目に「日本列島が、どうやったら科学的に説
  得力ある方法で、かつドラマチックに沈むか?」という
  問題意識で分析をしてみせるのがメインテーマである。
  まさにSFマニア大喜びの知的エンターテインメントで
  あった。

  それにしても、こんなにも日本列島を沈めるのが大変と
  は思わなかった。本書によると、日本列島の基盤となっ
  ている部分はマントルや海底プレートより軽いため、単
  にプレートが移動してマントル下へ引きこもうとしても
  おいそれとは沈まないのだ。それを押してどうやって沈
  む理屈をつけたか?その辺は実物を読んでのお楽しみで
  ある。

追記:著者のひとり、藤崎氏は昨年(2005年)、まさにその
  地球物理学的知見をフルに取り入れた小説「ハイドゥナ
  ン」を発表しており、本書の出発点はその内容のもとと
  なった現実の地球科学に関する解説書を書きたいという
  願いからだったのだそうだ。どうやら、この小説も読ま
  ねばならないようである。
posted by 半端者 at 01:36| Comment(0) | TrackBack(1) | 軽めの書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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